「大阪万博テーマウィーク」 博物館の地域性と持続可能な発展に焦点を当てる

japanese.shanghai.gov.cn| 2025-05-28

5月25日、国際博物館会議アジア太平洋地域連合(ICOM-ASPAC)と上海万博博物館の共催により、「大阪・関西万博テーマウィーク」のワークショップが開催されました。異なる文化背景における博物館の地域性について議論が行われ、博物館が国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に果たす積極的な役割に焦点が当てられました。

万博会場における唯一の博物館出展主体として、万博博物館は率先してリーダーとなり、分野を超えた国際的なネットワークを築きました。2020年のドバイ万博から始まった「テーマウィーク」という特別なイベント形式を活用し、万博博物館は「万博+文化博物館」という両分野のスペシャリストとしての優位性を発揮して、初めて万博会場内に博物館による特設会場の開設を実現しました。万博と博物館のという異なる分野の関係者が一堂に会し、いかに文化の力を通じて持続可能な発展を促進していくかについて話し合いました。

活动现场_标题.jpg

大阪・関西万博テーマウィークワークショップの様子(写真提供・澎湃新聞)

上海万博博物館の劉文涛館長は、「博物館と万博には多くの共通点があり、持続可能な社会に向けた重要な文化的推進力でもあります」と語りました。そして、博物館と万博のいずれも展示を基本的な手段とし、テクノロジーと文化の発信や教育の普及に注目し、交流と対話を重視しながら、来館者へのサービスを主な目的とし、人類社会の持続可能な発展を重要な使命としていると述べました。

劉館長は「世界最大規模かつ最も注目を集める展示イベントとして、万博はその革新的な展示理念と技術によって、博物館に影響を与えています。また、一部の万博パビリオンは博物館として再利用されることで、都市の経済や文化の発展を促進する例も多く見られます」と語りました。その例として、1970年の大阪万博で建設された万国博美術館(現在の国立国際美術館)や大阪日本民芸館は万博終了後も保存され活用されていることや、上海万博博物館も、2010年の上海万博を契機に生まれ、万博の精神の普及を使命として活動しつづけていることを挙げました。

劉館長はさらに、中国の長江デルタ地域にある博物館をいくつか例に挙げ、中国における博物館の発展状況を紹介しました。彼女は、中国では2008年以降、博物館の無料開放政策が実施されて以来、博物館事業が著しい発展を遂げてきたこと。そして、その成果は博物館の数と来館者数の増加に表れており、2024年年末の時点で、中国には登録済みの博物館が7046館あり、年間の来館者数は約14億人に達していると述べました。

世博会博物馆展台.jpg

大阪・関西万博会場に設置された上海万博博物館ブース(写真提供・澎湃新聞)

国際博覧会事務局に唯一認定された公式博物館として、上海万博博物館は歴代万博に関する貴重な「コレクション」を展示するだけではなく、デジタル人文、バリアフリー運営、地域社会教育などを含む、中国国内の博物館の持続可能な発展に向けた革新的な取組も紹介しています。

イベントでは、出席した文化・博物館分野の専門家やゲストが、博物館の社会的機能と責任、文化の多様性と包摂性、デジタル化および持続可能な発展といった多様な観点から、異なる文化背景における博物館の地域性について議論し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて博物館が果たしている積極的な役割に焦点を当てましました。

现场观众.jpg

現場の観衆(写真提供・澎湃新聞)

上海大学上海美術学院の教授であり、中華芸術宮(上海美術館)の副館長を務める馬琳氏と、日本国立民族学博物館の名誉教授・元館長であり、日本国際博物館会議副会長でもある吉田憲司氏は、博物館と地域社会の発展との関係について言及しました。

馬琳氏は、上海地域における博物館と地域住民の協働実践を例に挙げ、博物館が都市の再生において芸術的に介入する方法や、地域との共創メカニズムの構築について考察しました。吉田氏は、博物館は単なる過去の有形資料の保管場所や観光スポットではなく、地域文化の蓄積・発信の拠点であり、地域社会において代々受け継がれてきた知識・記憶・技術を包括するものであるため、人々が地域に対する誇りや帰属意識を育むための重要な場でもあると述べました。

また、韓国鉄器博物館の館長であり、国際博物館会議副会長、韓国博物館基金の理事長でもある張仁卿(Inkyung Chang)氏は、韓国の博物館を例に、コロナの危機を経て、持続可能な発展のために、経済的な安定を図るべく博物館が模索している新たな可能性について紹介しました。

出典:澎湃新聞

あわせて読みたい