世界人工知能大会――世界的なAI協力と交流のプラットフォーム
世界人工知能大会は、上海がグローバルなAI開発の分野におけるソリューションを発信する重要な場となっています。
人工知能(AI)を巡るグローバルな競争が激化する現在、上海は「中国のアプローチ」で前進し続けています。「世界人工知能大会(WAIC)」をグローバルなAI集積のプラットフォームへと発展させ、AIのエコシステムの集積を核にして産業の高度化を推進しています。そして、制度的支援と実用的応用の連携を革新のための「実験場」としています。
科学技術革命の潮流に乗り、第8回世界人工知能大会(WAIC 2025)が開催され、上海がAI革新の発信地、そして発展の新たな拠点になるよう後押ししています。この年に一度の国際的イベントは、思想の交流を促進するとともに、産業の発展を加速させ、若者に新たな視野を開き、AI技術が都市生活に深く浸透し、グローバルな協力をさらに深めていく推進力となっています。
実り多い成果を得た過去のWAIC
過去7回の世界人工知能大会では、いずれも記憶に残るハイライトが生まれました。
2018年の第1回大会には、40カ国以上から7万2000名のゲストが参集し、上海のAI産業が本格的に始動したことを印象付けました。
2019年には、大会の規模が倍増し、阿里巴巴(アリババ)創業者のジャック・マーとテスラのCEOイーロン・マスクの対話が業界で話題を呼び起こしました。
2020年には、初めて「クラウドサミット(オンライン開催)」の形式で開催され、オンライン視聴数は2億5000万回を超えました。
2021年には、フォーラム・展示会・コンテスト・実用化体験の「四位一体」の融合を初めて実現し、イベントの質、ゲストの陣容、成果の数、来場者数、メディアの関心度など、あらゆる面で向上しました。
2022年には、過去5年間におけるAIの重要な世界的な成果を集中的に展示しました。
2023年には、グローバルAIエコシステムの連携と産業協力の加速に焦点を当て、生成AIやエンボディドAIが話題になりました。
2024年には、大会名を「世界人工知能大会およびAIグローバルガバナンス・ハイレベル会議」に変更し、開幕式で『人工知能グローバルガバナンスに関する上海宣言』が発表され、AIガバナンスが新たな高みに引き上げられました。
これまでの大会には、世界的な科学者、チューリング賞受賞者、ユネスコや国際連合工業開発機関(UNIDO)などの国際機関の代表、ジャック・マー、ポニー・マー、イーロン・マスクらテック業界の巨頭、ベンチャー投資家、政府関係者など延べ6550名以上が参加し、AIの未来と人類社会の深い関わりについて議論を交わしてきました。
2025世界人工知能大会(WAIC2025)
2025世界人工知能大会は、7月26日から28日にかけて、上海の世博センター、世博展覧館、徐匯西岸など複数の会場で同時開催され、技術の牽引、応用の実証、産業の加速、ガバナンスの議論といった側面で引き続き重要な役割を果たしています。
今年の大会は「イノベーション・発展・協力・包摂・開放」の5つのキーワードに焦点が当てられました。
中国のAIの発展は、産業チェーンの急速な成長と科学技術の自立・強化を重視し、グローバルガバナンスに関するルールを共に創ることを通じて、「発展」と「ガバナンス」を同時に推し進める新たな体制を形成しています。
今回の大会では、「会議フォーラム」「展示」「コンテストと表彰」「応用体験」「イノベーション・インキュベーション」の5つの主要セクションが設けられ、AI技術の最前線、産業の動向、グローバルガバナンスの最新の実践事例が総合的に紹介されました。
主催者によると、2018年の創設以来、WAICは世界的なAI協力・交流のプラットフォームへと発展してきました。中国の英知を示す場であると同時に、上海がAIのグローバル発展のための「ソリューション」を世界に発信するための重要な舞台でもあります。
WAIC 2025は、インスピレーションを刺激し、業界の発展を牽引する技術の祭典と位置付けられ、会期中には「大規模モデルとエージェント応用」「新たなコンピューティングインフラとビッグデータ」「AI for Science(科学のためのAI)」「スマート端末と具現化知能」「新型工業化」「AI+金融」「AI+民生」「AI再構築」「安全なガバナンス」「AI+エコ発展」などの最先端の議題に及ぶ約100のフォーラムが行われました。
各フォーラムを通じて、WAICは世界のAI分野における思想的な高みとしての位置づけをさらに確かなものにしました。主催者は、「知能の本質は何か」というAIに関する根本的な問いが上海から発信され、世界中で反響を呼んでいると述べました。
若い人材の活躍
WAIC 2025は世界中の若手AI人材にとって活躍の場ともなっています。主催者によると、参加者の40%以上は35歳以下であり、ハイレベルな学術対話と産業交流のための基盤を築きました。
サウジアラビアのキング・アブドラ科学技術大学(KAUST)で自動運転を専攻する李国豪博士が海外の若手研究者の代表として参加しました。中国国内からは、AI学習の専門家である朱軍氏、香港理工大学の楊紅霞教授ら学界の代表のほか、上海智元新創技術(AgiBot)の共同創業者・最高技術責任者の彭志輝氏、AIインフラ企業「無問芯穹」(Infinigence AI)の共同創業者・戴国浩氏、首形科技(上海)有限公司(AheadForm)の共同創業者・胡宇航氏ら次世代の業界人材が集いました。
今大会では、基礎的なアルゴリズム研究から実践的な応用シーンに至るまで、幅広い分野を網羅する若手人材ネットワークが構築されました。若い世代はその創造力によってAI革新の限界を押し広げ、大会の進化をけん引する最も強力なエンジンとなっています。
重鎮のゲストが一堂に会する
今回、73の国と地域から1572名以上のゲストが参加し、過去最多を記録しました。その中には、ノーベル賞・フィールズ賞・チューリング賞などの受賞者12名、国内外のアカデミー会員80名以上、業界のリーダー215名、大学のAI学科の責任者30名以上が名を連ねていました。
ヨシュア・ベンジオ氏、スチュアート・ラッセル氏、フィリップ・ランバック氏らの学際的専門家に加え、国連工業開発機関(UNIDO)グローバル工業AI連盟卓越センター、フィールズ数学科学研究所などの国際機関も参加し、「AIインフラ」「AI for Science(科学のためのAI)」「スマート端末」「AIによる新型工業化へのエンパワーメント」「AI+金融」「AI+医療・ヘルスケア」「AI+教育・人文」「AIによる業界の再構築」「安全なガバナンス」「AI+エコ発展」など、10の主要分野をめぐり、思想的対話とトレンドに関する討論が行われました。
さらに、アマゾン、グーグル、シーメンス、シュナイダー、百度、アリババ、テンセント、ファーウェイ、アントグループ、商湯科技(SenseTime)、京東、聯想(レノボ)、宇樹科技、AgiBot、MiniMax、StepFun、Infinigence AIなど、中国国内外の主要なAI企業が一堂に会し、最新の産業成果を披露しました。
ノーベル賞受賞者から若い起業者、グローバル企業の幹部から大学の学術的権威まで、WAIC 2025は、産業・学術・科学研究・実用化の融合を進めるための一流のエコシステムの構築を模索しました。
AIアシスタントの登場
今回大会では、AIアシスタント「Hi! WAIC」が初導入され、参加者に効率的でパーソナライズされたスマートな展示会サービスが提供されました。
このシステムは、中国国内で開発された複数の先端的な大規模言語モデルを統合しており、即時応答、スマートマッチング、迅速なサービス、知識の蓄積などが実現されています。「Hi! WAIC」は「人と情報」「人と技術」「人と機会」をつなげることで、人と機械が協働する新たな会議体験を創出しました。
主催者によると、「Hi! WAIC」はユーザーのニーズをより深く理解し、展示会の全体の状況を把握した上で、最適な見学ルートを手配し、参加すべき行先についてアドバイスし、潜在的な出展者とのマッチングをすみやかに提案できます。
さらに、ユーザーの関心に応じて、展示ブースやフォーラム、イベントに関する情報を通知します。QRコードをスキャンすれば該当エリアのリアルタイム情報やスケジュールをすぐに取得できるサービスを提供しました。
また、「Hi! WAIC」の学習能力は高く、ゲストによる講演、質疑応答など、大会の高い価値を持つ内容を自動で記録・分類し、独自の知識データベースを構築します。
最先端のトレンドをリードする
WAIC 2025は、より深いコミュニケーションと潜在力を引き出すため、開幕式、メインフォーラム、AIグローバルガバナンス・ハイレベル会議、発展と安全保障に関する2つの会議、政府主催の10を超えるフォーラム、および複数のエコフォーラムなど、一連の交流プログラムが行われました。
議題は、AIインフラ、科学インテリジェンス、スマート端末、AIによる新型工業化の推進、AI+金融、AI+医療、ガバナンス安全など、多岐にわたりました。
さらに、世界気象機関(WMO)、ユネスコ、国際連合工業開発機関(UNIDO)やフィールズ数学科学研究所、スメル数学計算研究所などの国際機関もフォーラムを主催し、産業発展の方向性をリードしました。
過去最大の展示規模
今回の大会は、展示面積が7万平方メートルを超え、800社以上の出展企業から3000点を超える最先端製品と技術が展示されました。その中には40種類以上の大規模言語モデル、50種類以上のAI端末、60種類以上のスマートロボットが含まれており、過去最大規模となりました。そのうち100点以上が「世界初公開」や「中国初登場」の新製品でした。
展示エリアは「核心技術館」「業界応用館」「スマート端末館」「全域連携館」の4つに分かれています。
「核心技術館」は、大規模モデル、チップ、データプラットフォームを重点的に展示し、AIの基盤技術の発展を示しました。
「業界応用館」では、新型工業化、スマート運転、スマートシティ、フィンテックなど、AIと実経済の融合成果を展示しました。
「スマート端末館」では、人型ロボット、ハードウェア、自動運転システムに焦点を当て、「AIはいかに画面を飛び出し、実用化されるか」という課題に応えていました。
「全域連携館」は、スタートアップ企業と投資家、AI技術企業と応用シーンの関係者間の連携を促進することを目的に、「投資―需要」双方向の連携を構築し、技術成果の転化と商用化を支援しました。
年間を通じた運営
WAICは2018年の創設当初は3日間だけの開催でしたが、現在では通年で運営される総合プラットフォームへと発展してきました。
「WAIC Future Tech」インキュベーション・プラットフォームは、世界中のAIスタートアップ企業に向けて「年間成長ロードマップ」を提供し、過去2年間で500社以上のスタートアップ企業にサービスを提供してきました。
「WAIC Connect」ビジネスマッチング・プラットフォームでは、2025年に100以上の調達グループへのサービス提供を予定しており、200件以上の調達リストの発表、新製品の発表の支援も予定されています。
大会初の公式刊行物『WAIC UP!』は、AI市場の洞察に焦点を当て、大会の影響力を高めています。
「革新教育ブランド」である「WAIC Young」は、若年層を対象に、展示会、コンテスト、ハイレベルフォーラム、科学普及活動を通じて、若者がAIに関する夢を実現するための舞台を提供しています。
都市を展示場に――WAICシティウォーク
今日の上海は、AIに関する発想のグローバルな発信地であり、AIの実用化を示す窓口でもあります。AIは「裏方」から「表舞台」へと移行し、行政サービス、医療、グリーン・低炭素、地域ガバナンスなど、都市生活のさまざまなシーンに深く浸透しています。
都市リニューアルの細部において、AIはビルのスマート管理、省エネ改修、デジタル化ガバナンス、交通、医療、公共サービスなどに活用され、上海の歴史ある街並みに知恵と活力を吹き込んでいます。
上述の実用化シーンを踏まえ、WAIC 2025では浦東、徐匯、楊浦、黄浦、虹口、宝山など、上海の重点エリアを網羅する「WAICシティウォーク回遊記」のおすすめルートが初めて打ち出されました。これらのルートは、AIが生活・産業・ガバナンス・芸術・空間といったさまざまな分野において深く融合している様子に焦点を当て、AIがガバナンスの論理、産業の能力、空間の美学においてどのように交わり、融合しているかを体系的に示しています。
Z世代の舞台
大会の期間中、40歳以下の業界エリート、一般市民、学生、投資家のために、新しい成果を共有する交流プラットフォームが提供されました。
今回のWAICユースエリートフォーラムでは、初めてラウンドテーブルディスカッションが設けられました。シンガポール国立大学、オックスフォード大学、カリフォルニア工科大学、香港科技大学、清華大学、北京大学などが参加し、学術界と産業界の若者によるグローバルなAIコミュニティをともに構築しました。
7月27日の夜、「WAIC UP!ナイト」が開催され、デジタルアートやアカデミックバー、異分野交流などを通じて、若者たちに交流の場を提供しました。7月28日夜の「イノベーションナイト」では、投資家とスタートアップ企業との深い対話が実現しました。
また、中央広播電視総台が新たに立ち上げたテレビ番組「2025中国・AI盛典」では、世界トップクラスのAI技術を集結し、一般市民がAIの魅力を身近に体感できるようにしました。
グローバル協力のビジョン
過去7年間、WAICはAI分野における国際的に重要なイベントとなり、80を超える国や地域の政府関係者、国際機関の代表、企業リーダー、研究者を惹きつけてきました。
最先端技術を紹介するほか、AIグローバルガバナンスに関する深い考察と共通認識作りを呼びかけ、国際協力によってチャンスを掴み、課題に取り組むことを強調しています。
2024年には「人工知能グローバルガバナンスに関する上海宣言」が発表され、発展、安全、ガバナンス、社会参加、社会福祉などに関する一連の提言がなされ、中国はAIのグローバルガバナンスの構築に向けて、「中国ソリューション」で貢献しました。
2024年9月には、上海で中国と国連が共催した初の「AI能力構築ワークショップ」が開催され、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が開会式に出席して挨拶をしました。約40カ国の政府代表や専門家が参加し、経験を共有し理解を深めました。
産業発展
新たな質の生産力を代表する存在として、上海は、統合されたメカニズムを通じて、基礎研究から製品への応用に至るまでのAI産業全体の発展を推進しており、科学技術の進歩と産業構造の転換に向けた新たな道筋を築いています。
現在、上海では東と西が呼応するAI産業の新たな構図が形成され始めています。西には徐匯区の「模速空間」大規模モデル・イノベーションエコシステム・コミュニティ(Shanghai Foundation Model Innovation Center、SMC)があり、東には浦東新区の「模力社区」(モデルマトリクス・コミュニティ)があります。
「模速空間」は、中国初の大規模モデルエコシステムの拠点であり、わずか1年余りで400社以上の関連企業を集積させ、アルゴリズム、チップの演算能力、データ資源、垂直産業の協調的発展を促進しています。
一方、「模力社区」は、垂直型モデルの育成とサプライチェーン全体の連携に注力し、インテリジェントコックピット、光コンピューティング、ニューロモーフィックAI、自動運転などの先端分野にまたがる約200社の企業が集積しています。
政策的支援から制度の革新に至るまで、上海はWAICを通じて、再現可能かつ普及可能なAI産業の発展モデルを提示しています。2018年の創設以来、WAICには世界中から数百万人が参加し、約300件の産業協力を実現し、産業を数千億元規模に成長させてきました。
グローバルな「友人の輪」の構築
AIの発展は、技術の進歩や産業の発展のみならず、グローバルな共通認識と協力も不可欠です。WAICは、中国における最も活発なAI対外交流プラットフォームの一つであり、世界の知恵をつなぐ架け橋としての役割を果たしています。
過去7年間、WAICは80以上の国と地域から政府関係者、国際機関代表、企業リーダー、科学者を引き寄せてきました。また、国際連合工業開発機関(UNIDO)、世界気象機関(WMO)、ユネスコ(UNESCO)など、30以上の国際機関と安定的な協力メカニズムを築き、時差や言語の壁を越えたグローバルな知のネットワークを形成してきました。
2024年、WAICはG20加盟国、BRICS諸国の代表団、及び複数の在中外国公館を迎え入れ、より開かれ、自信に満ちた国際協力の姿勢を示しました。
黄浦江のほとりで開催されたWAIC 2025は、時代の問い、科学技術の問い、都市の問いに対し、中国ならではの「回答」を提示する場となっています。ここは思想が交わる場であり、若者のエネルギーが集まる場であり、産業変革のロールモデルであり、さらにガバナンスにおける共通認識を育むインキュベーターです。何より、国家戦略、技術革新と市民の生活が深く融合している上海のリアルな姿を映し出す縮図でもあるのです。