創造都市を築くには? 16カ国の代表が経験を語る
創造性は実際に都市を変え得ます。9月27日に開催された2024年世界デザイン都市会議「創造都市」デザインフォーラムでは、イギリス、イタリア、スペイン、韓国、日本など16カ国の市長、政府関係者、創造都市の代表者、世界トップ大学の学長、中国の創造都市の代表らが一堂に会し、創造都市づくりに関して各自の経験と課題をシェアしました。
クチンはマレーシアにある人口わずか70万人の小さな都市です。この小さな都市は、食と手工芸品で有名で、東マレーシアで最も人気のある観光地の1つとなり、何万人もの農民や露天商が就業機会を得て、ユネスコから「世界の手工芸と民間芸術の都」として認定されています。
クチンと同様に、上海も2010年にユネスコの創造都市ネットワークに加盟しました。2023年には、上海の文化・クリエイティブ産業の規模は前年比7%増の2兆3400億元に達し、そのうちデザインが7割を占めています。デザインは、上海の現代化国際大都市の建設に、かつてない広さと深さで組み込まれています。
アラブ首長国連邦のドバイでは、クリエイティブ産業がGDPに占める割合は2%に達しており、これは地元政府の産業誘導政策と直接関係しています。2013年、ドバイはデザイン・アート・ファッション産業が集まるクリエイティブ地区「D3コミュニティ」を設立しました。ここに、現在では1万人以上の専門家が集まり、中東で最も人気のあるクリエイティブ地区となっています。この地区を育成する中で、ドバイの文化部門は、地区の居住者の大半が個人デザイナーや中小企業であることを知り、これらのグループの成長をサポートするため、地区に共有オフィススペースとサービスプラットフォームを設置しました。
ユネスコ・デザイン都市なごや推進事業実行委員会のプログラム・ディレクター、江坂恵里子氏によると、日本の名古屋では、伝統産業の海外進出を支援するプロジェクトとして、760社の企業、教育団体、経済団体からなる中部日本経済連合会を設立し、文化セクターがクリエイティブ産業の海外進出をサポートしているとのことです。プラットフォームのネットワークと一連のイベントの支援のもとで、名古屋の伝統産業の従事者は海外に進出し、地元の手工芸品の販路は開拓され、その文化の価値は世界に広められています。クリエイティブ・デザイン産業は、今や名古屋の三大産業の1つになっています。
今回のフォーラムで繰り返し登場したキーワードは「融合」であり、ほぼすべての都市の代表が、創造性を刺激するような共同の創造やコラボレーションを望んでいることを表明しました。業界やサークル、そして国を超えた融合が必要な場合もあるでしょう。そのため、多くの都市が国際的なコンペティションを開催し、世界中からクリエイティブな人材を惹きつけようとしています。
韓国のソウルデザイン財団の国際部ディレクター、厳雅英氏は、「ソウルも上海と同様に、2010年にユネスコにより創造都市ネットワークのデザイン都市として認定され、共通の学びを通じて世界の持続可能な発展を促進するため、2019年にソウル市政府は『ソウルデザイン賞』を設立しました」と紹介しました。この賞は世界中のデザイナーを対象としており、2023年には62の国からエントリーがありました。
都市経済の発展は現在だけでなく、将来の課題も考慮する必要があります。フォーラムでは、複数のデザイナーや都市の代表が、持続可能な発展について言及していました。
イギリス王立芸術学院建築学部長のエイドリアン・ラフード氏によれば、人口増加、高齢化、気候変動によって、人々の生活環境や社会環境は実際に変化します。そして、人類社会が発展し続けるにつれて、人口における何らかの構造的矛盾が徐々に明らかになり、人々の生活の質を向上させるためにはデザインが重要になります。そのため、「経済や芸術のイノベーションに比べ、社会の持続可能な発展に関わるイノベーションのほうがより重要なのではないか」と考えています。
フォーラムでは、ユネスコ「創造都市ネットワーク」事務局長であり、都市プラットフォームのコーディネーターであるデニス・バックス氏は、「長年にわたり、世界の創造都市ネットワークは、世界の文化的発展を促進する重要な力となり、『持続可能な発展のための2030アジェンダ』の実現をサポートしています」と述べました。2030アジェンダの半ばを過ぎた今、ユネスコは文化が持続可能な発展目標の達成にどのように貢献できるかを全面的に模索しており、2030年以降の持続可能な発展アジェンダに、文化を独立した目標として組み込むことを提案する予定だとしています。
情報源:上観新聞(Shanghai Observer)