5つの「キーワード」から読み解く2026年「全国両会」の注目点

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第14期全国人民代表大会第4回会議および中国人民政治協商会議第14期全国委員会第4回会議(以下「全国両会」)が開催されています。以下の5つの「キーワード」は、今年の全国両会における経済分野の主要な注目点を示しています。

1. 「第15次五カ年計画」の始動

2026年は「第15次五カ年計画」の初年度にあたります。「全国両会」の開催期間中には、「第15次五カ年計画要綱草案」の審議も行われます。いかにして好調なスタートを切り、着実な第一歩を踏み出せるかが、各界の関心を集めています。

粤開証券のチーフエコノミスト兼研究院院長である羅志恒氏は、「第15次五カ年計画」時期における経済発展の水準は、2035年までに「1人当たりGDPを中等先進国 水準に到達させる」という目標の実現に直接的な影響を及ぼすと指摘しています。その上で、良好なスタートを実現するには、改革と逆周期(カウンターシクリカル)型の調整を同時に強化するとともに、需給バランスの促進、新旧成長エンジンの転換加速、生産要素の利用効率向上、そしてミクロ経済主体の意欲向上という4つの側面から、中国経済の成長潜在力を十分に引き出す必要があると述べています。

また、「国民経済・社会発展第15次五カ年計画の策定に関する中共中央の建議」では、「現代化産業システムの構築と実体経済の基盤強化」が戦略的任務の筆頭に掲げられている点も注目されています。中国情報通信研究院の王志勤副院長は、この期間において、先端技術のブレークスルーを原動力とし、企業を主体に、イノベーション要素の融合と将来を見据えたガバナンスを保障とすることで、未来産業の新たな飛躍を継続的に促していくべきだとの見解を示しました。

2.「積極有為」

2月27日に開かれた中国共産党中央政治局会議では、「より積極的かつ有為なマクロ政策 を実施する」との方針が示されました。同会議では、「より積極的な財政政策と適度に緩和された金融政策を維持し、改革措置とマクロ政策の連動を強化する」ことが強調されています。故に、今年のマクロ政策はいかに「積極有為」(やるべきことに積極的に取り組むこと)を具体化するかが、全国両会における重要議題の一つとなる見通しです。

財政政策について、申万宏源証券の趙偉チーフエコノミストは、2026年も必要な財政赤字水準、一定的債務総額・支出総額の規模が維持されると予測しています。同時に、財政政策と金融政策の連携が重視され、資源配分の最適化を通じて、あらゆる経営主体の資金調達コストを効果的に引き下げ、民間投資の活力を喚起することが重要だと述べています。

金融政策について、中誠信国際研究院の袁海霞院長は、構造的金融政策ツールが引き続き重点となり、今後も消費、科学技術、グリーン分野、高齢者介護関連分野など重点領域への支援を強化していくとの見方を示しています。今年1月からはすでに全面的な構造的利下げが実施されており、年内にはこれらのツールの活用がさらに進むと見込まれています。

また、消費てこ入れもマクロ政策の重要な柱となります。ドイツ銀行の大中華区である熊奕チーフエコノミストは、消費の喚起が依然として今年のマクロ政策の最優先課題であり、中でも「サービス消費」の潜在力を引き出すことが最重要事項になると述べています。

3.「人への投資」

2025年政府活動報告では、初めて「人への投資」という概念が打ち出されました。また、「国民経済・社会発展第15次五カ年計画の策定に関する中共中央の建議」では、「人民大衆生活水準の向上と消費の促進、『モノへの投資』と『人への投資』を緊密に結びつける」「人的資源の開発と人の全面的発展への投資を強化する」と明記されています。

業界関係者は、投資の対象が単なる「物(インフラや設備)」から「人」へと広がることは、投資による実質的な成果が、人民大衆生活水準の向上において極めて重要な役割を果たすことを意味すると指摘しています。

国家発展改革委員会・国家情報センター研究員の魏琪嘉氏は、民生関連施策を着実に実行していくうえで、以下の3つのことを重視すべきだと述べています。第一に、財政支出の「総枠」が基本的に大きく変わらない前提のもとで、支出の構造を最適化し、民生分野へ重点的・戦略的に資源を配置します。第二に、将来を見据えて計画を立て、現状に立脚しつつ、より長期的な視点を持ちます。第三に、民生分野における普恵型・基礎型・セーフティネット 型の投資を着実に進めます。

4. インテリジェント経済

中国国務院が昨年発表した「『人工知能+』行動のさらなる推進に関する意見」では、「2027年までに、6つの重点分野で人工知能との広範囲かつ高度な融合を率先して実現し、次世代インテリジェント端末やエージェントなどの普及率を70%以上に高め、インテリジェント経済における基幹産業の規模を急速に拡大させる」ことが掲げられています。

中国電子情報産業発展研究院・未来産業研究センターの蒲松涛所長は、「次世代人工知能は経済発展に新たな成長力をもたらす。今後数年間では、情報サービスを主軸とした大規模言語モデル関連サービスが、新たなサービス業態として定着するだろう」と予測しています。

人工知能と多様な産業とのさらなる融合は、技術の進化を産業の増分へと転換し、利用シーンの優位性を競争優位性へと昇華させることにつながります。中国工業インターネット研究院・インテリジェント化研究所の顧維璽所長は人工知能を新たな質の生産力を発展させるための鍵と位置付け、利用シーンとの融合を深化させるべきだと述べています。具体的には、利用シーンの革新を通じて技術の高度化・改良を促し、「需要によって供給を牽引し、供給によって新たな需要を創出する」という好循環のエコシステムを構築することで、人工知能技術と実体経済の融合を深化させ、産業全体のインテリジェント化を推進する必要があるとしています。

5.投融資の総合的改革

中央経済工作会議では、資本市場における投融資の総合的改革を持続的に深化させる方針が打ち出されました。いかに投融資の総合的改革を通じて、資本市場がハブとしての機能を十分に発揮させ、科学技術イノベーションと新たな質の生産力の発展を効果的に支えるかが、市場主体から大きな関心が集まっています。

川財証券の陳靂チーフエコノミストは、「改革は投資側と資金調達側の両面から協調的に推進すべきだ」と指摘しています。機能が整い、効率的に運営され、規範性と透明性を備えた現代的な資本市場制度体系の整備を加速し、科学技術・産業・金融の好循環を円滑化する必要があると述べています。

近年、中国証券監督管理委員会は「両創板(「科創板」と「創業板」)」の改革に注力しています。ハイテク企業向けの株式市場「科創板」(科学技術イノベーションボード、スターマーケットと略称) では、研究開発投資が大きい一方で、まだ黒字化していない成長性の高いテクノロジー企業を的確に支援することを目的に差別化制度を導入したなどの措置を講じました。また、スタートアップ企業向けの「創業板」では、より柔軟で包容力のある「第3の上場基準」を導入しました。これらの施策により、資本市場におけるの「テクノロジー比重」は着実に向上しています。

アーンスト・アンド・ヤング(EY)アジア太平洋地域の監査サービス・マーケット共同主管パートナーである湯哲輝氏は、資金調達側では「質の向上」に焦点を当て、証券発行の登録制(IPO登録制)をさらに深化させるとともに、多層的市場の包容性を高め、コアテクノロジー企業向けの資金調達手段を充実させるべきだと述べています。一方、投資側では「効率向上」に注力し、年金や保険などの長期資金の参入を促進するとともに、上場企業のガバナンスや配当のメカニズムを強化し、投資者に対する保護を一層徹底する必要があるとしています。

出典:新華網、経済参考報