「裏庭」から「新たな舞台」へ――上海農村が都市の新たな魅力を定義

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世界有数の大都市・上海。その市域の60%以上を広大な農村地域が占めています。長年にわたり、これらの地域は都市観光の枠組みにおいて都市の「裏庭」と位置づけられてきました。広大な面積を有しながらも、注目を集めることはほとんどありませんでした。しかし、上海の都市機能の進化と農村振興の進展に伴い、農村の役割に対する認識は大きく変わりつつあります。現在、上海の都市周辺の農村はその独特の空間的価値と癒しの体験を通じて、「都市住民を惹きつける」舞台を築き上げ、国内外から多くの観光客を惹きつけています。

農村の美しさを発見

上海で長年暮らすスペイン人のアントンさんにとって、農村は都会のストレスを解消する場です。中環を自転車で通り抜け、西へと進み、青浦区にある劉夏路や和睦村に入ると、まるで時間の流れがゆっくりと緩やかになったかのように感じられます。この「ゆったりとしたペース」こそが、都市周辺の農村が持つ核心的な競争優位性となりつつあります。

青浦区にある和睦村を例に挙げると、この典型的な江南地域の水郷集落は、いまや「人気を集める話題の村」として人々を惹きつけています。今年3月の週末、同村の1日あたりの来訪者数は2万人近くに達し、村内の400台以上の駐車スペースでは需要に追いつかないほどにぎわいを見せました。その人気の背景には、都会の人々が最も求めている「心のゆとり」を的確に捉えた点があります。

全長500メートルに満たない和睦水街は20軒余りの古い民家を改装したもので、田舎の素朴な風情を残しつつ、現代的なデザインも取り入れています。ここでは、観光客はトルコ風の砂煎りコーヒーを味わったり、趣のある茶室でくつろいだり、蘇州刺繍や切り絵が集まる週末のマーケット「和睦柿集」を散策したりすることができます。

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週末のマーケット「和睦柿集」の露店(写真提供・解放日報)

こうした「新業態」と「自然」の融合は多くの異分野からの人材を呼び込み、この地に定着させています。かつて村づくりに携わっていた馬雲富氏は安定した職を辞し、農村での起業に踏み出した1人です。彼は「上海の農村は市街地に隣接し人の流れには恵まれている一方、田園生活を存分に楽しめる質の高いプロジェクトが不足している」と指摘しました。こうした村民に寄り添う「伴走型デザイン」 の手法を通じて、上海の都市周辺の農村の多くが従来の行楽地や花見スポットから、都市の美意識に合致したライフスタイル空間へと変貌しつつあります。

多様な体験を創出

上海の農村の魅力はその風景だけでなく、そこに息づく包容力と多様性こそが、人々を魅了する大きな要素となっています。青浦区にある岑卜村は「魔都のアマゾン」と称され、上海で唯一ホタルを観賞できる場所として知られ、豊かな自然環境を誇っています。この恵まれた環境がプロのアスリートやダンサー、外国人など、多くの「新村民」を惹きつけています。

岑卜村では現在、大規模かつ高水準なウォータースポーツ産業クラスターが形成されています。若者たちがカヤックを漕いで近所を回る姿が日常の光景となっています。村からは全国カヤック大会の優勝者も輩出しています。さらに、同村の農村暮らしは海外の人々からも大きな関心を集めています。上海で働くドイツ人グループは、よく同村の隠れ家レストランを訪れます。彼らは水上ボートに乗ったり、交流会を開いたりするほか、麻雀セットを持って田舎へ出かけ、中国の文化を体験することもあります。

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ウォータースポーツで知られ、「魔都のアマゾン」と呼ばれる岑卜村(青浦区)(写真提供・解放日報)

2024年、岑卜村からほど近い場所にファーウェイの練秋湖研究開発センターが稼働を開始し、この水郷に新たな活力を吹き込みました。現在、ファーウェイの技術者を含む新村民は161人に達し、常住人口の3分の1以上を占めています。そのため、村内の農家の家賃は高騰し、産業の活性化と村民の所得増加という双方の利益を実現しています。

さらに、広々とした農村空間は新興経済の発展を促進する基盤ともなっています。閔行区にある豊収村では、ペット競技会を軸とした「ペットライフシステム」が徐々に形成されつつあります。

2023年、人と犬がペアで挑む国内初の「ワイルドチャレンジ」が浦江郊野公園で開催されました。3年間で、この大会は単なる障害物レースから登山やハイキングなど多様な形式へと発展し、累計60回以上開催されています。大会の人気が高まるにつれ、さまざまな業態が発展しています。

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浦錦街道の支援のもと、浦江郊野公園内の1万平方メートル余りの小島に設立されたペットスクール(写真提供・解放日報)

浦錦街道の支援のもと、浦江郊野公園内の1万平方メートル余りの小島にペットスクールが整備され、宿泊トレーニングやデイケア、グルーミングなどのサービスがワンストップで提供されています。大会とスクールがともに集客し、自立的な収益力を高め、数多くのブランドからのスポンサーシップを獲得することで、好循環を生み出しています。

こうした特定の感情的ニーズに応えるペット経済は上海郊外で急速に発展しています。崇明区や青浦区などの地域でも相次いで関連政策が打ち出され、産業支援を通じてテーマ村への民間資本の誘致が進められています。

全域連携を推進

上海はこれまでの「単一産業の発展」という状況を打破し、農業・文化・観光・商業・スポーツ・展示の6つの産業の融合を推進することで、全域観光の新たな枠組みを構築しようとしています。このモデルはフランスのサンテミリオンなど、国際的に有名な町の経験を参考にしたもので、「エリア・マトリックス」を通じて観光客を定着させ、「単一の目玉スポット」を、より深く体験できる観光地へと昇華させることを目指しています。

今年春の上海農村観光シーズンにおいて、上海の9つの農業関連区が初めて連携し、55のテーマ別観光コースを打ち出しました。

例えば、観光客は奉賢区にある荘行鎮で菜の花を鑑賞した後、すぐにアニメ・ゲーム・カーニバルに参加することができます。また、浦東新区にある七灶村では、美術館での鑑賞、キャンプやバーベキュー、そして高級ホテルでの宿泊が一つのコースとして組み合わされています。データによると、「菜の花祭り+コミコン」のコラボイベントは開催後の最初の週末だけで延べ15万人近くを動員し、約500万元の消費を促進したなど、業態連携による相乗効果を十分に示しています。

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奉賢区にある荘行鎮で開催された2026年上海第1回MGアニメ・ゲーム・コスプレカーニバル(写真提供・解放日報)

今後、上海は引き続き海外からの観光客向けに「ミニバケーション」商品を開発していく方針です。農村体験と外灘やディズニーランドなどの都市ランドマークを結びつけ、農村地域で国際グルメフェスティバルやランドアート展などの国際的なイベントを開催することで、「都市+農村」を融合させた複合型観光ルートを形成し、世界共通の言語を用いて上海の農村の魅力を世界に向けて発信していきます。

出典:解放日報