【都市のイメージ】上海の歴史的建築物をたどる――ホテル・旅館

japanese.shanghai.gov.cn

上海は、中国においてホテル・旅館業の発展が早く、宿泊施設の数も多い都市の一つです。その歴史は13世紀末にまでさかのぼり、当時すでに「客栈」と呼ばれる簡易な宿泊施設が登場しており、600年以上の歴史があります。上海が開港して通商が始まると、国内外から商人や旅人が往来するようになり、経済の繁栄とともに、「客栈」の数も増加していきました。

特に1920~30年代に入ると、上海は宿泊施設建設が盛り上がり、大規模で設備の整ったホテル・旅館(飯店)が次々と建設され、上海の宿泊環境はさらに豊かなものとなりました。

ホテルとして建てられた施設とは異なり、上海には、由緒あるガーデンハウス(洋館)や歴史建築物を改修して誕生した著名なホテルが数多くあります。これらの施設は、丹念なリノベーションを経て、建物が持つ歴史的風情と文化的な深みを損なうことなく残しつつ、現代の需要に応じた新しい機能が加えられ、保護と活用が絶妙に融合した独自のホテル・旅館の景観を形作っています。

旅行客が都市文化を味わい、都市の印象を形づくる上で重要な場として、ホテルや旅館は単なる宿泊場所としての枠を超え、都市文化の「伝承・表現・発信・活性化」という役割を担う存在となっています。

浦江飯店

浦江飯店(アスター・ハウス・ホテル)は黄浦路15号に位置し、旧名は「礼査飯店」(リチャーズ・ホテル・アンド・レストラン)といい、1846年に開店しました。1959年に「礼査飯店」から「浦江飯店」に改称され、1999年には、上海市第3次優秀歴史建築に指定されました。

图片5.png

現在の浦江飯店(写真・WeChat公式アカウント「上海住房城郷建設管理」)

浦江飯店は、イギリス新古典主義を基調としたヴィクトリア・バロック様式の建築で、南向きに建てられ、建築面積は1万5700㎡に及びます。構造は、一部が鉄筋コンクリート造、一部はレンガと木造による6階立てです。1階はアーチ状の開口部が特徴で、2階から上には張り出しバルコニーが配されています。3階と4階の間にはイオニア式の大型柱頭が装飾として配置されています。西側の角は半円形に造られ、頂部にはドーム型の塔楼がそびえています。通りの向かいから眺めると、建物はV字形に配置されており、外壁は凹凸が豊かで立体感があり、全体的には優雅で荘厳な佇まいです。中央ホールには、ヴィクトリア期ゴシック・リバイバル様式のホテル建築の原形がよく残されています。

浦江飯店は中国で初めて電灯がともった場所、初めて電話が設置された場所、初めてトーキー映画が上映された場所という歴史的な建築です。現在、この建物は「中国証券博物館」となっています。

東湖賓館

東湖賓館は東湖路70号に位置し、豊かな歴史文化を有するヴィラ式ホテルです。もとは個人の邸宅でしたが、1985年に東湖賓館と改称されました。

东湖宾馆现状.png

現在の東湖賓館(写真・WeChat公式アカウント「上海住房城郷建設管理」)

敷地内には6棟の建物があります。そのうち1号棟と2号棟は1934年に建てられ、当初は4階立ての連棟式のガーデンハウスでしたが、後に1階分が増築されました。建物の東側と西側には小さな洋館がそれぞれ建ち、庭には瑠璃瓦を用いた東屋があります。最も名高いのは東湖賓館の7号棟で、東湖路と淮海中路の角に位置します。フランス・ルネサンス様式のガーデンハウスで、2階建てのレンガ・コンクリートの混合構造です。1階は矩形窓、2階は緩やかなアーチ窓で、窓の脇にはイオニア式の双柱が配されています。外壁両側の軒下には華麗で精緻な花様の彫刻が施されており、屋根にはバロック風の渦巻装飾が見られます。内装は古典様式の木製装飾が中心で、繊細で多彩なモールディングや彫刻が随所に見られ、壁には銅製の燭台型ブラケットライトが取り付けられており、濃厚な欧風情緒を漂わせています。

現在の東湖賓館は、幾度もの改築・改装を経て、いまや中国内外に知られる上海の上質なホテルとなっています。

興国賓館

興国賓館は興国路72号に位置する、上海市中心部のガーデンヴィラ型ホテルで、趣の異なる複数の別荘で構成されています。ここが開発される前、この一帯は農地であったが、1932年に雷上達路(現在の興国路)が整備された後、外国企業が続々とこの地に別荘を建てました。1949年以降、通りの名「興国路」にちなんで「興国賓館」として設立しました。

兴国宾馆现状.png

現在の興国賓館(写真・WeChat公式アカウント「上海住房城郷建設管理」)

敷地内には数棟の様式の異なる複数の別荘が点在しています。このうち1号棟は1935年に建てられたイギリス・パラディオ様式の新古典主義建築です。2号棟は1925年に遡る建造物で、典型的なイギリスのカントリースタイルのガーデンハウスとして、素朴で落ち着いた田園の趣を漂わせています。1922年に建てられた6号棟は、優美なフランス式のガーデンレジデンスが特徴です。中でも特筆すべきは1921年に建てられた7号棟です。当時の上海で名を馳せた「徳和洋行(Lester,Johnson&Morriss)」の設計による建物で、かつては「迥峰楼」と呼ばれました。現在は、上海市第3次優秀歴史建築に指定され、その歴史的・芸術的価値は極めて高い建築物です。

国際的なメトロポリス、上海において、こうした歴史的建築物を改修した特色あるホテルは、「静的な文化財」を、実際に体感できる「動的な文化空間」へと転化させています。それは都市文化の生きた継承を実現するとともに、上海が世界に向けてその歴史の文脈と近代的な魅力を発信する、独特な窓口ともなっています。

出典:WeChat公式アカウント「上海住房城郷建設管理」

あわせて読みたい