外国人監督が『上海の音』で紡ぐ、無形文化遺産の新たなロマン

japanese.shanghai.gov.cn|

このほど、世界的に知られるキプロス出身の作曲家、マリオス・ヨアンヌ・エリア 氏が監督を務めた無形文化遺産ドキュメンタリー映画『SOUND OF SHANGHAI (上海の音)』が長寧区・虹橋芸術センターで上映され、アジア初公開を迎えました。

_cgi-bin_mmwebwx-bin_webwxgetmsgimg__&MsgID=7011730103595418684&skey=@crypt_f0cfbb73_d988de8c9002bda37db9e0bb21d9f1ea&mmweb_appid=wx_webfilehelper.jpg

上映会の様子(写真提供・WeChat公式アカウント「上海長寧」、以下同様)

創作の原点となったのは、中国の伝統演劇・昆曲の名作『牡丹亭』です。マリオス監督は初めて同作を耳にした時、歌詞が描く切なくも深く心に染みる物語の意味は理解できなかったものの、昆曲特有のその朗々と響く、優美な節回しに心を揺さぶられたといいます。その感動が、「上海の無形文化遺産が奏でる音を記録する、特別なドキュメンタリーを作りたい」という思いにつながりました。

作中では、マリオス監督が『牡丹亭』の代表的な旋律をテーマ曲に採用し、昆曲への敬意を示しつつ、作品全体をつなぐ感情の架け橋としています。さらに「音」を手がかりに、民族音楽、太極拳、顧繍(伝統刺繍工芸)、茶道、チャイナドレス、十錦細鑼鼓(伝統打楽器合奏)、皮影戯(影絵芝居)など、数々の中国の無形文化遺産を一つの作品へと紡ぎ上げています。

無形文化遺産が持つありのままの音風景を捉えるため、マリオス監督は、従来のドキュメンタリーで多く見られる演出シーンを中心とした表現手法にとらわれず、自ら録音機材を手に刺繍工房や茶館、武道場、舞台へと足を運びました。そこで、普段は見過ごされがちな繊細な音の一つひとつを丁寧に拾い上げていったのです。

_cgi-bin_mmwebwx-bin_webwxgetmsgimg__&MsgID=4342270551157826328&skey=@crypt_f0cfbb73_d988de8c9002bda37db9e0bb21d9f1ea&mmweb_appid=wx_webfilehelper.jpg

ドキュメンタリーの撮影現場

例えば顧繍の撮影では、仕上がった美しさそのものよりも職人の手元にじっくりとカメラを据え、針先が布を通り抜ける微かな響きや、はさみが絹糸を断ち切る「チョキン」という澄んだ音を捉えています。彼が撮影した世界では、太極拳の演舞で足裏が床を擦る音、茶道で注がれる湯水のリズム、チャイナドレスを纏った女性のハイヒールが刻むステップの調べなどが、この街ならではの「音の印」として表現されています。

_cgi-bin_mmwebwx-bin_webwxgetmsgimg__&MsgID=1492861846793935678&skey=@crypt_f0cfbb73_d988de8c9002bda37db9e0bb21d9f1ea&mmweb_appid=wx_webfilehelper.jpg

ドキュメンタリーの撮影現場

「上海は未来へ向かって発展する都市ですが、その礎は過去に深く根ざしています。この街に過去・現在・未来が共存する姿を表現したかったのです。そして、無形文化遺産こそ、その三つの次元をつなぐ、生きている架け橋なのです」とマリオス監督は語っています。

さらに、ポストプロダクションでは、マリオス監督が現代的な技術も取り入れ、音の表現力を一層高めました。伝統楽器のサンプリング音とエレクトロニックサウンドを融合させ、現場で収録した環境音をアレンジすることで、古典的な趣と現代的な質感を併せ持つ独特な音響空間を創り出しています。

こうした試みに対し、上海市文化・観光局無形文化遺産処の楊莉氏は、「同作の最大の革新性は、音の表現によって没入型の鑑賞体験を生み出した点にある。世界共通の言語である『音』を通じて、都市の文化的な奥深さを表現している」と高く評価しています。

今後、『上海の音』は海外での上映も予定されています。国際的なクリエイターの視点から中国の無形文化遺産の物語を発信することで、より多くの海外の観客に上海を知ってもらい、中国の伝統文化が持つ魅力を届けていく期待が寄せられています。

出典:WeChat公式アカウント「上海長寧」