「上海株式投資業界の質の高い発展の更なる促進に関する若干措置について」の解説
「私募投資ファンド監督管理条例」(以下、「条例」)を貫徹・実行し、株式投資が実体経済へのサポートおよび科学技術革新への促進での機能を発揮し、上海国際金融センターと国際科学技術イノベーションセンターの連動発展を推進するために、上海市政府弁公庁がこのほど、「上海株式投資業界の質の高い発展の更なる促進に関する若干措置について」(以下、「若干措置」)を公布しました。
一、「若干措置」の制定背景
株式投資は、革新資本の形成の促進、直接融資の割合の向上、科学技術革新の支援などにおいて重要な役割を果たしており、党中央と国務院は株式投資業界の発展を高度に重視しています。2023年12月に開催された中央経済工作会議で、ベンチャー投資や株式投資の発展を奨励すると指摘されました。同年10月に開催された中央金融活動会議においても、多様な株式融資を発展させ、一流の投資機関を育成し、上海の国際金融センターとしての競争力と影響力を高めることが明らかになりました。
同年7月に、国務院が「私募投資ファンド監督管理条例」を公布し、これは株式投資業界の健全な発展にとって画期的な意義を持っています。同年6月、国務院常務会議が「テック企業融資支援強化行動案」を審議・採択し、草創期のテック企業の支援を最重要な課題にし、株式投資を主とする、「株貸債保(株、ローン、債券、保険)」連動の金融サービス支援システムの構築を加速させると指摘しました。
株式投資業界の質の高い発展をさらに促進するための政策文書を制定・公布し、「募集、投資、管理、回収」の全プロセス・各段階のサービスを継続的に細分化・最適化し、より多くの投資機関を上海に誘致し、長期的に発展させることは、党中央および国家の配置を貫徹・実施し、上海国際金融センターと科学技術イノベーションセンターの連動発展を促進するための重要な力点です。
二、「若干措置」制定時の考慮
「五つの中心」建設の重要な使命にいっそう焦点を当て、社会主義現代化国際大都市の建設を加速させるために、文書制定時には主に以下の四つの面を考慮しました。
1つ目は、国家および同市の部署配置を実行することです。「若干措置」は、「私募投資ファンド監督管理条例」が市場参入、業務展開要件、登記・登録、資金調達、投資運営、監督管理などの面における制度・手配を全面的に貫徹し、業界の健全な発展の促進、科学技術革新支援機能・役割の発揮などの目標を際立たせています。また、国務院の「テック企業融資支援強化行動案」および市委員会、市政府の活動配置の実行に着目し、長期資金、ペイシェント・キャピタルの育成に力を入れ、早期投資、小規模投資、科学技術投資を導き、上海国際金融センターと科学技術イノベーションセンターの連動発展を促進します。
2つ目は、業界発展の悩みと難点に焦点を当てることです。株式投資機関、監督管理部門、業界協会などへの調査・訪問に基づき、政策研究・分析を強化した上で、「若干措置」は、機関の設立、資金調達、投資回収、情報共有などの各方が集中的に反映した難点に焦点を当て、政府引導基金、企業のベンチャー投資、長期資金の導入、財税政策の最適化など、市場の注目する分野で、より的確な措置を打ち出しています。
3つ目は、株式投資業務の特徴に密着することです。「若干措置」は、株式投資業界の運営規則と特徴に対する認識の深化、市場と政府の相互関係の適切な処理、各段階において異なる役割の位置づけの把握を重視しています。設立、募集、回収の段階において、政府の支援・誘導の役割を果たすことに力を入れ、前倒しに一歩進んだ支援の提供を強化します。投資および管理の段階において、株式投資機関の主体的役割と専門的能力の発揮に注力し、関連部門が統一的な協調と支援保障を行い、市場と政府の良好な相互作用と共同発展促進の局面を形成します。
4つ目は、実施の重要性を強調することです。「若干措置」は、政策の実施可能性と実践可能性を重点的に際立たせ、一部の措置について明確な手続期間、ルート、金額などを明示しています。政策指導と環境整備の強化を重視し、質の高い株式投資集積区の建設を提案し、的を射た関連奨励・補助政策を打ち出しています。
三、「若干措置」の主要内容
「若干措置」は、9つの部分、合計32条からなっています。
第1部分の5箇条は、株式投資機関の設立サービスと業界管理の最適化に関するものです。業界の発展と規範を統括的に計画し、株式投資要素の集積を推進し、ルートの公開、期間限定の受理、市・区の並行推進などの手配を通じて、株式投資機関が株式投資集積区での新設または転入を奨励し、良質なファンドマネージャーの新設株式投資基金にファストトラックメカニズムを設置し、手続きの効率を引き上げます。株式投資業界の管理を改善し、情報共有メカニズムを確立し、リスクの早期通報と処理の協力を強化し、業界の「扶優汰劣(優れたものを支援し、劣ったものを淘汰する)」を促進します。
第2部分の3箇条は、早期投資、小規模投資、科学技術投資の促進に関するものです。政府引導基金(政府誘導ファンド )の誘導効果を強化し、エンジェル投資の専門化サービスプラットフォームを構築し、社会資本の投資拡大を促進するなど、異なるレベルの政策・措置を通じて、早期投資、小規模投資、科学技術投資の風向計を作り出します。
第3部分の2箇条は、企業のベンチャー投資発展の支援に関するものです。産業チェーンの主要企業がCVC(Corporate Venture Capital、企業ベンチャー投資)を展開することを支援し、そのCVC機関は株式投資機関と同様の特別支援政策を利用することができます。CVCファンドの上海での展開を誘致し、CVCファンドの資金調達や事業展開などにサポートを提供し、同市の各種類の産業パークとCVCファンドの協力・連動を促進し、産業チェーンの集積効果を拡大します。
第4部分の4箇条は、長期資本とペイシェント・キャピタルの育成に関するものです。国家レベルの基金の上海投資のサービスを完備し、全国社会保障基金長江デルタ科学技術イノベーション特別基金の実行に貢献することを強化すると同時に、その他の国家レベルのマザーファンド、中央企業(中央政府直属の国有企業)基金などとの連結・導入を行い、上海における投資配置の拡大を促進します。保険資金や銀行の資産運用資金が、同市の重点産業とハードテクノロジー分野への投資拡大を支援します。企業年金、基本養老金(年金)などの長期資金が、商業化の原則に基づき株式投資基金に投資することを支援します。
第5部分の5箇条は、株式投資の回収ルートの円滑化に関するものです。合併・買収・再編の回収効率の向上、投資先企業の国内外上場ルートの円滑化、ファンドシェア譲渡プラットフォームの機能向上、Sファンドの発展の促進、現物株式配当の試行実施などを通じて、株式投資の回収ルートを拡大します。
第6部分の3箇条は、財税優遇政策の実施に関するものです。ベンチャーキャピタル業界の既存の税制優遇政策の連結・実施を確実に行い、証券監督、発展改革、税務部門の情報共有メカニズムを確立・完備し、精確なプッシュと十分な政策享受をしっかりと推進します。株式投資集積区が認定されたベンチャーキャピタル企業または個人のビジネスパートナーに段階付きの成果奨励を与えることを励まし、長期投資を誘導します。
第7部分の4箇条は、業界の連動革新・発展の促進に関するものです。上海科創金融改革試験区などの制度革新、上海国際金融センターと科創センターの建設が連動する優位性に基づき、株式投資基金マネージャーの上場、株式投資機関の債券発行、投資融資連動革新およびQFLP(適格海外投資事業有限責任組合)試行の深化など、さまざまな面において業界の連動革新を推進します。
第8部分の4箇条は、質の高い株式投資集積区の建設に関するものです。株式投資集積区は、100億人民元以上の区級引導資金を設立し、総合サービスなどの機能的プラットフォームを構築し、株式投資の総合サービスを強化します。株式投資基金マネージャーの専門能力の向上を支援し、重点機関や専門人材への誘致サービスを強化します。業界発展の統合的な協調を強め、業界が直面する共通の問題に対して協調的な支援とサービスを提供します。
第9部分の2箇条は、業界の社会組織の建設の強化に関するものです。業界社会団体の機能・役割を発揮し、専門委員会の建設を強化し、専門委員会が業界の重点分野の特別研究を展開し、上海で株式投資分野のヘイレベル対話、ブランド化フォーラム、特別セミナー・サロンなどの活動を開催することを支援します。