中国国際ライセンス業界サミット2025:日本の経験から中国革新へ、世界を繋ぐIPの力

japanese.shanghai.gov.cn| 2025-07-21

ディズニーランドの没入型体験から、人気を博した博物館の文化クリエイティブ商品、アニメIPのクロスオーバーコラボ、さらにはバーチャルアイドルの商業的ブレイクスルーに至るまで、今やIP(知的財産権)は文化・ビジネス・消費をつなぐ核心的な存在となっています。このグローバルなIPブームの中で、ライセンス業界はIP権利者と市場をつなぐ重要な橋渡し役として、その重要性がますます高まっています。

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Bilibili Worldの様子(写真提供・Bilibili World)

7月15日、ライセンスエキスポ・上海2025(LEC)とライセンシング・インターナショナルの共催により、上海で「中国国際ライセンス業界サミット2025」が開催されました。今回のサミットは「グローバル化・デジタル化」をテーマに、バンダイナムコ、ビリビリ動画(Bilibili)、メトロポリタン美術館、iQIYI、テンセントビデオ(騰訊視頻)、小紅書など、中国国内外のライセンス産業チェーンの関係者らが一堂に会し、8つの基調講演と3つの円卓会議を通じて、IPライセンス業界の最新動向と実践的なアプローチについて深く議論しました。

最新のグローバルライセンス市場レポート発表:中国の博物館・美術館ブームが続く

ライセンシング・インターナショナルのモーラ・リーガン会長が発表した「グローバルライセンス市場レポート2025(2025 Global Licensing Industry Study)」によると、2024年の世界のブランドライセンス商品の販売額は前年比3.7%増で、世界の小売全体の成長率(3.1%)を上回っていることが明らかになりました。

地域別では、東南アジアは6.8%の成長率でトップに立ち、中東・アフリカは6%の成長を記録しました。中国市場は特に目覚ましく、小売規模は144億ドル、前年比約5%増と、世界平均を大きく上回りました。

モーラ・リーガン会長は「中国市場はデジタル化とIPの融合において世界の先頭を走っています」と強調し、「ソフトウェアやコンテンツゲーム分野におけるIPライセンスの展開は5.6%上昇し、多くはコラボの形式で実現されています。デジタル技術がIPライセンスに新たなシーンや体験を生み出しているのです」と述べました。また、没入型体験や小売のエンタメ化といったトレンドが中国市場において特に顕著であり、オンラインとオフラインの境界が既に消えているといいます。

日本の経験と中国の革新:IPはいかにしてコンテンツからビジネスへと転換するか

日本のバンダイナムコは「機動戦士ガンダム」や「太鼓の達人」など、多くの有名IPを保有しています。バンダイナムコ(上海)の諸麦達也取締役は、「バンダイナムコの中核戦略は『IP軸』、つまりIPを中心に産業チェーン全体のエコシステムを構築することです」と述べました。そして、「ライセンス手法論:日本のライセンス市場におけるトレンドの変遷から未来を探る」と題して、日本の成熟したIP運営の経験を共有しました。

中国市場に対して、諸麦達也氏は「ローカライズとグローバル化の両立」を強調し、「私どもは2021年には上海で18mの実物大のガンダム像を設置し、2023年にはマクドナルドとコラボして限定モデルを発表しました。これらはすべて、日本のIPと中国の消費者の間に感情的なつながりを築くための取り組みです」と話しました。バンダイナムコは海外売上の比率を35%まで高めることを目標としており、「中国市場はこの目標実現のための中核です」と明かしました。

一方、Bilibili(ビリビリ動画)は、中国における二次元コンテンツの集積地として、『時光代理人』『天官賜福』『凡人修仙伝』など、良質な国産アニメIPを多数保有しています。ビリビリ動画のIP運営およびライセンスビジネス部門の責任者・シニアディレクターの茶仙氏は、同社のIPライセンス分野における中国国内でのイノベーション経験について紹介しました。

茶仙氏は、ビリビリ動画は2009年にACG文化の活発なコミュニティとして誕生し、2014年に日本アニメの調達を開始しました。2017年からは中国国産アニメの制作に取り組みを始め、コンテンツの再生プラットフォームから制作事業者へとビジネスモデルの転換を実現したことを説明しました。そして、「2019年には正式にライセンス事業チームを立ち上げ、2023年に初のライセンスエコシステム会議を開催し、毎年業界パートナーと交流する場を作りました」と述べました。

ビリビリ動画のエコシステムの強みについて、茶仙氏は「私たちは国産アニメ、日本アニメなど多様なジャンルをカバーするOGVコンテンツマトリクスを構築しているだけではなく、バーチャルアイドルや動画投稿者「UP 主」といった独自のIP運営にも取り組んでおり、二次元と三次元を跨ぐクラスターを形成しているという優位性があります。さらに重要なのは制作環境の整備であり、良質なコンテンツはさまざまな二次創作やファンの共創によって拡張されます。例えば、ドキュメンタリー配信後に、アニメリアでの解説動画や、美容エリアでのモノマネメイクがすぐに投稿されます。このようなクリエイターのエコシステムはとても強力です」と紹介しました。

また、エコシステムの連携については、同氏は「MADEBY BILIBILI高能中心運動会(ハイエナジーセンター運動会)」を例として挙げ、「スポーツをテーマに、IPコンテンツ、オフラインのシーン、店舗ブランドを結び付けることで、没入型の消費体験を提供しています」と述べました。

また、IPのグローバル展開においては、ビリビリ動画はすでに60のIPを190カ国で配信しており、「『時光代理人』『天官賜福』は海外アニメイベントやコラボで優れた成果を挙げており、中国IPのグローバルなポテンシャルを示しています」と述べました。

IPの双方向融合という「文化の架け橋」を構築

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「中国とグローバル市場間のIPの双方向融合の道の構築」と題した円卓会議の様子(写真提供・澎湃新聞)

「中国とグローバル市場間のIPの双方向融合の道の構築」と題した円卓会議では、登壇者たちは、文化的差異、ローカライズ戦略、SNSの影響力などをテーマに、踏み込んだ議論が交わされました。

Alpha エンターテイメント(奥飛娯楽)の社長補佐・倉可氏は、中国IPの海外展開が「文化の壁」に直面していると率直に述べ、「『哪吒』や『李白』といったIPは、海外では華人には受け入れられても非華人にとっては理解が難しいです。非華人にも中国文化を理解してもらうための鍵は『文化の翻訳』にあります。つまり、『中庸』や『平和』といった中核的な価値観を相手が慣れ親しんだ表現形式で伝えることが大切です」と語りました。

メトロポリタン美術館のグローバルライセンスおよびパートナーシップ責任者であるジョシュ・ロム氏は、同館のIPを活用した異業種連携の経験について「スターバックスやFILAとのコラボでは、単に商品にアート作品を印刷するのではなく、消費者が『この商品を購入することで文化の継承に貢献している』と感じられるように努めています」と語りました。同氏は特に中国市場の独特性を言及し、「中国の消費者は芸術IPへの受容性が高く、『00後(2000年以降生まれ)』の若者たちは、博物館の関連グッズを目的にわざわざ来館することもあり、これは私たちの予想をはるかに超えています」と述べました。

また、IPライセンスおよびブランドマネジメント会社である「Pacific Licensing Studio(PLS)」は、これまでにスマーフやメトロポリタン美術館などのIPを中国市場に導入してきました。現在は中国アニメ『萌芽熊』の代理人として、初めて中国ブランドを世界市場に展開しようとしており、東南アジアを皮切りに進出を始めています。同社のパートナーのニール・ラッジ氏は「海外IPの中国展開でも中国IPの海外展開でも、IPの特性やブランドの性質に応じた方向調整が必要であり、それこそが私たちライセンス代理会社の強みです」と語りました。

グローバル市場データから企業の実際の実践事例、日本の経験から中国の革新事例に至るまで、本サミットはライセンス業界の発展の全体像を浮き彫りにしました。グローバル化とデジタル化が進展する中で、IPはもはや単一市場の「文化的シンボル」ではなく、多様な文化を結び付け、商業的価値を喚起できる存在となっています。中国のライセンス業界も単なる「受け入れ」から「海外展開」も行うようにという双方向の流れの加速の中で、より融合的で革新的な未来へと進んでいます。

出典:澎湃新聞(The Paper)

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