日本人イラストレーター宇山紡の「上海絵日記」
9年前、日本のイラストレーター宇山紡は上海に移住しました。彼女は絵筆で街のありのままの光景を描き、「上海絵日記」にまとめています。中国語フレーズは3つしか話せず、上海についてまったく知らなかった外国人としてスタートした彼女ですが、今では上海人の暮らしの細部やランドマークの裏にある歴史ある物語まで描き語ることができるようになり、絶えず上海への理解を深めています。

宇山紡と彼女が住んでいる老洋房(写真提供・取材先、以下同様)

宇山紡が自分の住まいを描いた作品。
初めて上海を訪れた際、宇山紡は雑貨店で牡丹柄が描かれた器を見かけ、それを花瓶だと思い込んでいました。しかし店主に聞くと、それはかつて上海の人々が使用していた痰つぼであることがわかりました。その後、彼女を驚かせたその痰つぼのデザインは、彼女の名刺のロゴとなり、彼女がデザインしたポストカードでも主役として描かれています。

上海の伝統的な花柄の綿入れを着て、痰つぼと一緒に写真を撮る宇山紡。

宇山紡の名刺と、彼女がデザインしたポストカードにはいずれも痰つぼのロゴが描かれている。

宇山紡の名刺と、彼女がデザインしたポストカードにはいずれも痰つぼのロゴが描かれている。
昨年、中国国際輸入博覧会(輸入博)は宇山紡に都市の展示パネルの制作を依頼しました。また、上海梅龍鎮伊勢丹が閉店する直前にも、彼女に南京西路の27年間の変遷を手描きしてもらい、上海っ子も「これが子供の頃の南京路だ!」と感慨深く語りました。

輸入博の展示パネルに登場した宇山紡の作品。

伊勢丹で展示された、南京西路の27年間の変遷が描かれた宇山紡の作品。
時が経つにつれ、宇山紡は徐々に上海語が理解できるようになりました。彼女は、上海語と日本語の「葡萄」が同じ発音であることや、上海語の「白相」(遊ぶという意味)が仮名で「ばいしゃお」と表記できることに気づき、それをヒントに絵本『白相相、好白相!』を創作しました。

宇山紡による新作絵本のイラスト抜粋
現在、彼女はよく日本の友人を連れてシティウォークをしながら、歴史的建築物にまつわる物語を語っています。また、上海の地図を東京の銀座や渋谷、成田空港などのランドマークに照らし合わせ、分かりやすく紹介しています。

東京の類似エリアに照らし合わせた宇山版の上海地図。
宇山紡の作品は、人々に別の視点から上海を再発見させてくれます。彼女が描く上海は、人々の記憶にある姿かもしれないし、まだあまり知られていない独特な都市生活の断片かもしれません。
出典:上観新聞