上海博物館「古代エジプト展」閉幕——277万人超を動員した衝撃的な展覧会の舞台裏

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8月17日24時、13ヶ月にわたり、2つの暑い夏をまたいで開催された上海博物館の特別展「ピラミッドの頂:古代エジプト文明展」が幕を閉じました。上海博物館は、連続168時間(7日7晩)開館し続ける「博物館不眠夜(眠らない博物館)」イベントを実施し、この特別展に盛大な別れを告げました。

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2025年8月17日夜、上海博物館で、ツタンカーメン像を見る観客(写真・朱偉輝/澎湃新聞)

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入場するため夜遅くに並ぶ観客(写真・WeChat公式アカウント「上海発布」)

8月17日に行われた閉幕記者会見にて、上海博物館の褚暁波館長は、本展の一連の成果を振り返るとともに、270万人を超える国内外の来場者と、展覧会の開催に尽力したスタッフに謝意を表しました。また、中国とエジプトの文化遺産分野における新たなマイルストーンとなる中国・エジプト共同考古プロジェクトの始動も発表されました。

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閉幕記者会見の様子(撮影・頼鑫琳/上観新聞)

「ピラミッドの頂:古代エジプト文明展」は、上海博物館の「世界と対話する」文物芸術シリーズ展の第4弾であり、史上最大規模・アジア最高水準の古代エジプト出土文物の海外展でした。中国の国立博物館が初めてエジプト政府と協力し、古代エジプト文明とその最新の考古成果を余すことなく紹介した世界トップクラスの展覧会でした。その95%以上の文物がアジア初公開となりました。

褚館長は「この展覧会の成功は、中国博物館の『超大型展覧会』時代の幕開けを示すものであり、世界文明の交流と相互理解における『中国モデル』の提示です」と述べました。

上海博物館の発表によると、本展の累計来場者は延べ277万7966人に達し、世界の博物館における単一有料特別展の入場者数記録を更新しました。来場者のうち7割近くが上海以外の地域から訪れ、他の都市からの観客の7割以上が本展を目的に上海を訪れていました。また、エジプト観光・考古省によれば、展覧会の影響で、中国からのエジプト入国観光客数は前年比65%増加しました。本展の総収益は76億元を超え、そのうち入場料収入は32億元超、文化クリエイティブイベントや関連商品の収入は44億元超に上りました。専門機関のレポートは、「このエジプト展の都市消費の誘発比率は1:48に達し、都市全体の総合消費を3500億元以上押し上げた」と分析しました。

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展覧会のテーマ文化クリエイティブ商品(写真・WeChat公式アカウント「上海発布」)

上海博物館の展覧会が持続的に大きな人気を集めたことで、その勢いが周辺の交通・ホテル・飲食・ショッピングなど一連の消費も牽引しました。褚館長は「この展覧会の成功は非常に大きな波及効果をもたらしました。社会や都市経済への牽引効果だけでなく、上海博物館の国際的な業界における影響力も著しく向上しました」と述べました。

褚館長はさらに「表面的には上海博物館の展覧会が盛況だったように見えますが、実際には上海という都市の魅力、長年培われた文化芸術消費の土壌、そして、関連する政策環境がありました」と述べ、また、古代エジプト展がトップクラスの文化展覧会となった理由について、「上海には良い政策環境があり、安心して、大胆に革新的な取り組みに挑戦することができるのです」と語りました。

政策環境から見ると、例えばエジプト展の高額な開催コストは、上海博物館が耐えうるぎりぎりのものでした。この資金はどこから来たのでしょうか。実はその主な原資は、上海博物館が2023年に開催した初の有料展「ボッティチェリからファン・ゴッホまで」の開催で蓄えた収益によるものでした。「この資金を蓄えることができたのは、上海市政府の進んだ政策である『上海市公共文化施設料金管理弁法』や『上海市文化・文物機関における文化クリエイティブ製品開発収益の分配・奨励に関する指導意見』などのおかげです。これらは有料展開催の政策根拠を提供するのと同時に、文化機関・博物館の文化クリエイティブ製品開発を推奨し、その利益の一部を事業発展や展覧会の誘致資金として留保できるようにしました。これにより、国外展覧会導入のための資金として活用することが可能になりました」と話しました。

ほかにも、上海の国際都市としての文化的な波及力・影響力、そして、濃厚な文化・芸術消費の雰囲気があります。「上海の博物館や美術館は年間を通じて多数の有料展を開催しており、市場を活性化させ、多くのベテランの文芸を愛好する若者を育て、芸術・文化消費の空気を醸成してきました。このことが、上海博物館が有料展を開催する上で極めて良好な社会的条件を生み出しました」。

とはいえ、最も肝心なのは、展覧会自体が十分に魅力的なものであることです。質の高い内容であって初めて観客を惹きつけ、入場料を払ってまで訪れたいと思うのです。エジプト展の開催難易度の高さは、業界でも広く知られていました。今回は、これまでの同テーマ展が欧米博物館からの貸し出し展や西洋的な視点による叙述に依存してきた伝統を破り、上海博物館が中国・エジプトの学者チームとともに独自に企画しました。通史とテーマ展示を組み合わせた独立した叙述を展開し、エジプト学に「中国の声」を加え、さらに中国文物を巧みに融合させて「文明間の対話」を実現させました。

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8月11日23時10分、「神々のNPCパレード」(写真・朱偉輝/澎湃新聞)

また、上海博物館は「古代エジプト文明展」の運営においてもイノベーションを重ねました。例えば、エジプト展に合わせて初めて「博物館『にゃんこ』ナイト」イベントを開催したり、168時間連続の「カーニバル」を実施したりするなど、話題性と集客力を高めました。他にも、プロジェクト開始当初からこの展覧会を最大限活用し、「ワンストップ型」の文化・観光体験という新しい場を創出するなど、多くの革新的な試みを行い、都市発展に深く溶け込ませました。

上海博物館「古代エジプト文明展」の閉幕記者会見には、エジプト考古最高評議会のハンガ・エルサイード代表も出席し、中国政府と上海博物館に感謝を表し、「この展覧会は中国・エジプトの友好と協力の重要な象徴となった」と述べました。さらに彼女は、「両国の文明交流の橋を架けただけでなく、歴史を尊重し、知識を探求し、人類の創造力を讃えるという双方の共通の価値観を証明しました。本展の閉幕は終点ではなく、新たな起点です。今後、中国とエジプトは、展覧会・学術・研修・創意などの分野で協力を深め、文明の友情を温め続け、共に新たな協力の章を紡いでいきます」と語りました。

「エジプト展」で築いた良好な信頼関係を背景に、上海博物館は中国・エジプト共同考古発掘プロジェクトを始動しました。2025年には古代エジプトの首都メンフィス近郊のセクメト神殿遺跡において共同発掘を実施し、両国の人文交流と協力をさらに推し進めます。これは、中国の考古チームがエジプト最古の中核的遺跡区で本格的に発掘に参画する初めての試みであり、古代エジプト文明展に続く、文化遺産分野における中国とエジプト両国の新たなマイルストーンとなります。

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ナイルデルタ地帯のムクダム遺跡にて、現地文物部門の関係者との記念写真(写真・澎湃新聞)

今後、上海博物館はエジプト国立考古チームと長期的に協力し、発掘・展覧・博物館建設を一体化させた新たな協力モデルを行っていきます。上海博物館の陳傑副館長は「もし展覧会が古代エジプト文明を『迎え入れる』ものだったとすれば、今回の考古発掘は私たちが『外へ出向く』取り組みです。私たちは傍観者から参加者へと転じ、もう1つの偉大な文明とより深く対話を行うのです」と語りました。

さらに、記者会見では、上海博物館が次なる「世界と対話する」シリーズの超大型展を積極的に準備していることも明らかにされました。

出典:澎湃新聞、上観新聞、WeChat公式アカウント「上海発布」

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