太鼓に合わせて体が動く
北京のアートサマーキャンプで子どもたちに教えるトニー・ウェーバー(右)さん。(写真・チャイナデイリー)
夫婦二人は打楽器という芸術形式を通じて、人々特に子供たちの生活を豊かにすることに貢献していると李映雪(音訳)が報道している。
20年前のエディンバラ国際フェスティバルで、英国人企業家のトニー・ウェーバーと妻の王学章(音訳、愛称ニンニン)にとって非常に大切な瞬間がありました。音楽祭のメロディの中で、西アフリカのパーカッションの衝撃的な演奏が、二人の心に刻みました。
リズムの共鳴、ほとばしる情熱、ドラマーたちから発せられる自由奔放な力は、二人の心に忘れがたい刻印を残しました。帰国した二人は、パーカッションと音楽に対する情熱を燃やし、自分たちが味わった喜びを分かち合いたいと決意しました。
それから20年以上、夫婦二人の旅は単なる演奏の域を超え、全国を駆け巡りながら、各地にリズムのすばらしさを残しました。この創造に満ちた旅の中で、自分たちの名前を合わせたブランド名、Toning Drumが生み出されました。
ステージ以外に、二人の願いは教育の分野にも開花し、オーダーメイドのカリキュラムとして結実しました。入念にデザインされたこのカリキュラムは、幼い子供たちの音楽的精神を育み、メロディの世界との深いつながりを構築することに役に立ちます。
王はまた、ラテン・スタイルのパーカッションが、国民的ポップ・スターたちに受け入れられつつあることに気づきました。「私たちは本当に楽しいことをやっていると思います」と彼女は語っています。
ある慈善イベントで彼らのドラムを披露するウェーバーさん。(写真・チャイナデイリー)
2003年に中国に戻ると、ウェーバーは重要な試みを始めました。3人の才能ある中国人ミュージシャンと6人の国際的な名手からなる9人の完璧なドラマーを集め、打楽器をマスターするための6ヶ月間の集中研修の旅に出かけました。
「リーダーがいる普通のバンドではありません。我々は企業のイベントとしてやっていたんです」と71歳の彼は言いました。
2004年の初公演は観客を魅了しました。「その後、私たちは公演の旅をやめませんでした。中国のいろんなところで公演をしました」とウェーバーは振り返り、公演で最大の観客数は3万人以上だったと付け加えました。
彼らのパフォーマンスは常に観客と交流し合っています。「私たちのショーでは、観客全員が手元にドラムを持っています」とウェーバーは述べます。
「ものすごく面白いのは200人だろうと2000人だろうと、同じリズムでドラムを叩かせることです。3分があれば、全員が一緒に演奏できます」とウェーバーは語っています。
「どこでも演奏できる楽器はほかにないでしょう」と彼は強調します。
ウェーバー著で英語と中国語両言語併記されている児童書『チャーリーの音楽の旅:ブラジル篇』(Charlie's Musical Adventures: Brazil)。(写真・チャイナデイリー)
年齢を感じさせない楽器
王さんは4歳からヴァイオリンを習い始め、20年前に打楽器に興味を持つまではプロの琴奏者でした。
「ドラムを叩いているときの幸福感に惹かれて」、「打楽器音楽のダイナミズムと情熱、そしてさまざまな音楽スタイルを新たに解釈できることに感動を覚えました。どの楽器でもかけがえないんですよ」と54歳の彼女は述べます。
彼女によれば、最も簡単な楽器の一つとして、ハンドドラムは赤ちゃんから99歳の老人まで幅広い年齢層に適します。
「リズムはすべての芸術の魂です。音楽の分野では、リズムはすべての音楽を支える骨格だと考えています。数分のうちに同じリズムでみんなで一緒にドラムを叩くことができるのは、音楽の素晴らしいところなんです」と王さんは言いました。
「リズムは、私たちの日常生活や仕事、そして身体の中にも存在しています。ですから、幼い子供たちにとって、打楽器の演奏方法を学ぶことは、芸術の啓発のために非常重要だ」と彼女は述べます。
2003年に初めてアフリカ音楽を中国に持ち込んだとき、中国の音楽教育の限界を目の当たりにして以来、打楽器教育は常に夫婦二人の重要な関心事となっています。
2010年、ウェーバーは上海打楽器協会(打楽器奏者のための主要組織)と協力して、『アフリカンドラムテスト・コース』を編集・出版しました。このコースは現在でも、この音楽分野における中国唯一のテスト教材となっています。
ウェーバーはアフリカ人の打楽器奏者を招き、彼らのリズムをすべて録音しました。「楽譜が読めない彼は生まれつきの奏者です。そこで私は大学の音楽学の教授を何人か集め、みんなで座って聴ききました。それを西洋の楽譜に書き起こすのに1年かかりました」とウェーバーは振り返っています。
2年後、中国で高まるラテン打楽器教育の需要に応えるために、ウェーバーは上海打楽器協会と共同で『ラテン打楽器教材』を出版しました。同書では詳細なイラストとともに主なラテン打楽器が全面的に紹介されました。
2016年、Toning Drumはドラムの治療効果を広める「Rhythms for Well-being」(健康のためのリズム)」を打ち出しました。
王さんは2016年から北京の三里屯で30人以上の上級生を指導してきました。「彼らはドラムで演奏するのがとても好きです」と彼女は言いました。ウェーバーによれば、教師研修を導入し、有名な音楽家や教育者を中国に招いてマスタークラスやワークショップを開催し、彼らの専門知識やスキルを中国の教師に教えるとウェーバーは伝えています。
ウェーバーと上海打楽器協会が共同開発した『アフリカンドラムテスト・コース』(写真・チャイナデイリー)
子供の遊び
現在の教師陣には、中国の専門の音楽大学の大学生や卒業生、教師養成コースを修了した非常勤講師が多く含まれています。
「幼い子どもたちがどう音楽を学ぶかということに、私はずっと興味を持っています。子どもと子どもの音楽、そして子供の興味をどのように育むかを研究してきました」とウェーバーは語ります。
2018年、ウェーバーは英語と中国語両言語併記されている児童書『チャーリーの音楽の旅:ブラジル篇』を上梓し、また物語を通して子どもたちが打楽器やその文化を学ばせるために子供向けの音楽カリキュラムを作りました。
王さんによれば、彼らは中央美術学院と協力し、芸術を学ぶ幼稚園児に授業を教えたというそうです。
「物語はアマゾンの熱帯雨林を舞台とし、アマゾン川をたどり、そこに生息する野生動物に出会ます。私たちは伐採を阻止し、動物たちを救出するミッションのために出発しました」と彼女は言います。
「この旅で子どもたちはラテン音楽のエッセンスをつかむだけでなく、ブラジル柔術の技術にも触れることで、異なる文化と学習を体験しました」と王さんは付け加えました。
「子どもたちにまずパーカッションで遊んでもらい、それからテーマを与えて作品を作ってもらいます」と彼女は説明し、さらに「講座はゲームや物語を通して教えるので、子どもたちはとても楽しんでいます」と紹介してくれました。
王さんは、子供に賞や賞状を与えることにこだわる親がいる一方で、子供たちが喜ぶことなら何でもいいという、異なる考えを持つ若い親もいると指摘しました。
また、中央戯劇学院と協力し、本の中の物語をミュージカルにリメークして子供たちに上演させる計画もあると明かしました。
「今、非常に残念に思うのは、進む情報の断片化は子どもたちに大きな脅威を与えているということです。私たちは子どもたちの教育をさらに充実させ、音楽以外の知識も得られるように最善を尽くしています」と王さんは述べました。