流行ドリンクから路地裏グルメまで――上海で広がる、外国人観光客による「中国の暮らし」体験
上海・淮海中路の街頭では、欧米や東南アジア、日本、韓国などからの観光客が長い列を作っています。彼らのレンズの先にあるのは、愛くるしい小さな羊の模様が描かれたドリンクです。「羊狩り計画」と呼ばれるこの消費ブームは、インスタグラムや小紅書といったSNSを通じて、今や世界中に拡散しています。かつて外国人観光客にとって、上海観光といえば、外灘や東方明珠塔といった定番ランドマークが中心でしたが、現在、彼らはSNSの口コミを活用して、路地裏の麺料理店やコミュニティスーパー、さらには洗練されたドリンクの店へと足を運び、よりリアルな中国の暮らしを深く体験しています。
「Matcha Wang」店内の様子 (写真提供・新民晩報)
昨年12月にオープンした抹茶専門店 「Matcha Wang」では、看板メニューの「小羊莉莉(小さな羊の絵柄が描かれた抹茶ラテ)」の人気を背景に、わずか3カ月で外国人観光客が必ず立ち寄る店になりました。関係者によると、現在1日あたりの来店客数は900~1200人で安定しており、その多くを外国人が占めているといいます。
「Matcha Wang」の人気が高まる一方、数キロ離れた田子坊ではまた異なる様相を呈しています。この上海の伝統的な「弄堂(小さな路地裏)」をリニューアルしたこのクリエイティブエリアは、中国のビザ免除対象国の拡大に伴う外国人観光客の急増により、再び活況を迎えています。
中でも、長年営業を続けてきた「老上海黄魚麺館」では、木製の看板に「Shanghai noodles」の文字が添えられています。店員の秦吉来さんは、「1日の注文数は通常約50件、ピーク時には100件を超えます。その9割以上を外国人観光客が占め、韓国、日本、シンガポールに加え、欧米からのお客さんも多いです。特に、2026年のF1中国グランプリ開催期間中には、店の前によく長蛇の列ができました」」と紹介しました。
「老上海黄魚麺館」の外観 (写真提供・新民晩報)
友人の勧めで訪れた韓国の映画プロデューサー、S.K.Jhungさんは、会議の合間を縫って田子坊まで足を伸ばしたといいます。「ここの建物の雰囲気も魅力的だが、何より食べ物が美味しい。帰国後は友人にも勧めたい」と満足げに話しました。
観光スポットにと止まらず、住宅地でも同じ現象が起きっています。大手スーパー「RTマート(平型関店)」は、SNSでの拡散をきっかけに、韓国人観光客の間で「買い物の聖地」となりました。インスタグラムでのおすすめ情報を活用して、エッグロールや火鍋の素、白酒などを箱買いしてくる観光客の姿はここでよく見られています。データによると、2025年に上海を訪れたインバウンド観光客は前年比40%増の936万人を記録し、約150億ドルの消費を創出しました。上海はその開放的な姿勢により、いまや訪中外国人にとって最高の目的地となっています。
韓国語のショッピングガイドを掲示している「RTマート」の店内 (写真提供・新民晩報)
流行をきっかけに上海を訪れる外国人観光客が増える中、上海は「都市の基盤力」を高めることで、それを一過性のブームではなく、持続的な魅力へと転換しようとしています。
中でも鍵となるのが決済の利便性です。多くの店舗でKakao Payなどの外国人に馴染みのある決済手段が導入され、専用の割引サービスも提供されています。また、RTマート(平型関店)は、上海初の「即時還付」サービスを利用可能なスーパーとなり、外国人来店客による高額商品の購入を大きく後押ししています。
「Kakao Pay」と連携して店内で専用の割引サービスを実施している「RTマート」 (写真提供・新民晩報)
また、事業者側も国籍による来店客のニーズにきめ細かく対応し始めています。例えば、「RTマート」は店内の目立つ場所に「韓国人観光客向け特設コーナー」を設け、韓国語のショッピングガイドを掲示するほか、客層のファッションや消費習慣に合わせた柔軟な経営戦略を実施しています。
路地裏の小さなお店でも、英語メニューや多言語の案内表示の導入が進んでいます。また、店員も簡単なキーワードで対応することで言葉の壁を克服しています。これにより、外国人観光客がモバイル決済や高速通信といった中国特有の利便性をスムーズに享受できる環境は整いつつあります。
英誌『Time Out』が発表した「2026年世界のベストシティ」ランキングで、上海は第2位に選ばれ、「生活コストパフォーマンス」の高さが特に評価されました。専門家は、ビザ免除対象の拡大に伴い、上海の国際的な魅力は一時的なブームから長期的なトレンドへと移行しつつあると指摘します。
持続的な集客と消費拡大に向けて、上海は今後も多角的な取り組みを強化する方針です。空港を単なる飛行機を待つ空間から、外国人観光客が最初に上海の魅力を実感できる場へと転換し、その関心と滞在意欲を高めます。また、SNS上のおすすめ情報や口コミだけに頼るのではなく、国際的な観光プロモーションにも積極的に関与し、海外でも理解されやすい形で上海の魅力を発信しています。「小さな羊の絵柄が描かれた抹茶ラテ」の爆発的な人気の獲得は、事業の成功であり、上海は、伝統工芸や無形文化遺産などの国際的な認知度と価値を高めることで、世界中で中国文化の真の影響力を発揮していきます。
出典:新民晩報