ビザ免除拡大の現在、「インバウンド観光のファーストストップ」の構築に取り組む上海の魅力は?

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中国は、ビザ免除対象国の範囲を拡大し続けています。昨年12月、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6カ国に対してビザ免除政策を試行し、その後もビザ免除対象国の範囲が続々拡大しています。そして、今年11月初めに一般旅券(パスポート)所持者に対し、ビザ免除の試行対象となるスロバキア、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランドなどの9カ国を加えると、ここ2年間で中国のビザ免除政策を試行する対象国は30カ国近くまで拡大しています。

ビザ免除政策による利益が続出し、モバイル決済等の便利な支払い方法を利用できるシーンが更に多くなるとともに、上海の観光地や街頭の外国人観光客の姿はますます多くなっています。これらの外国人観光客はどこから来ましたか。上海のどこに最も興味を持っているでしょうか。

昨年から、インバウンド旅行の観光客や地元の観光事業者は新たな変化に適応し、新たな模索を続けています。

「ビザ免除になったので、上海に来ました」

ビザなし入国できるようになったため、家族を連れて中国へ旅行しに行きたいと考えるビジネスビジターは多くなっています。今年3月中旬、中国はスイス、アイルランド、ハンガリー、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルクに対して一般パスポート所持者にビザ免除を試行したため、あるベルギー食品会社の人事部責任者オレイは、じきに14歳の息子を連れて中国に来ました。

十数年前、オレイは出張で上海に来たことがあり、その豊富多彩な町並みがとても印象的だったので、帰国後は子どもにもその風土を実感させたかったといいます。ビザ免除をきっかけに、彼女は直ちにその願いを行動に移しました。今年の夏休み、オレイは息子を連れて上海と北京に10日間滞在し、外灘、豫園、万里の長城、頤和園など定番の観光地を歩き回りました。慌ただしいビジネス出張よりも、今回家族と一緒に旅行に来て、中国に対する理解がさらに深くなり、子どもに中国の大都市の姿と人々の生活状態を実感させました。

現在、上海の街でドイツ語やフランス語を話す外国人観光客がよく見えます。中国観光市場に注力している海外旅行会社の中には、今年に入ってから接待したインバウンド旅行者の数が倍増しており、その中には100人の大きい団体を分割して30人から40人の団体にするケースも少なくないですが、このような大規模のインバウンド旅行団体が以前には少なかったのです。

中国龍と写真を撮っている今年4月クルーズ旅行で上海から入国した外国人観光客(撮影・孟雨涵/上観新聞)

スペインはインバウンド観光のヨーロッパ市場で最も急速に回復している国です。「スペイン市場は今年9月以降に規模が爆発的に拡大し始め、11月中旬まではスケジュールがいっぱいになっており、明らかな回復を見せています」と春秋観光インバウンド部門の鄭学達総経理が語りました。

全体のデータを見ると、ビザ免除が対象となる約30カ国のなかでも、それぞれの国の観光客の反応にばらつきがみられます。 携程(Ctrip)プラットフォームのデータによると、ドイツ、スペイン、イタリア、マレーシアからのインバウンド観光客の成長率は上位にランクされ、ビザ免除国の注文量が同プラットフォームのインバウンド旅行注文の3分の1を占めています。 航空券の注文データから見ると、過去2年間のインバウンド観光客の約4分の1は、2回目または複数回中国を訪れています。

ビザ免除対象国の範囲拡大がもたらした影響は、数字からも直接に見られます。国家移民局のデータによると、今年の第1四半期から第3四半期まで、全国の各出入国検査所から入国した外国人は2282万1000人となり、そのうち第3四半期は818万6000人、ビザ免除で入国した観光客は488万5000人で、前年同期比78.6%増となっています。 「中国インバウンド観光のファーストストップ」の構築に取り組んでいる上海は、インバウンド観光の回復速度が全国の先頭に立っています。今年1月から8月まで、上海訪問の外客数は402万7000人に達し、前年同期の1.1倍増となっています。

暮らし匂い溢れのツアーと「複数国巡り」の旅行が人気

上海を訪れる外国人観光客はこの街のどこに最も興味を持っているのでしょう。インバウンド観光客の平均年齢を引き下げたビザなし入国した若い観光客や家族観光客には、より新鮮で面白い場所や活動を探索する意欲が見られ、中国を観光した後に日本やベトナムなどの国へ旅を続けることもめずらしくないです。

現在、上海の広元菜市場、烏中市集(マーケット)、上鋼集貿市場も観光企業のインバウンド観光の観光候補地となっており、外国人観光客が高層ビルがたち並ぶという上海の都市風景を楽しむと同時に、暮らしの匂いが溢れる上海の「日常」をも体験することができます。さまざまなCity walkコース、豊富多彩な公演・展示、数え切れないグルメ、いずれもインバウンド観光客を惹きつけています。

広元菜市場に訪れる外国人観光客(撮影・孟雨涵/上観新聞)

大手旅行会社に勤めていたバイリンガルガイドの韋盈さんは、今は都市微旅行(マイクロツーリズム)のインストラクターに変身しました。現在、インバウンドの観光客グループをガイドする時 、韋盈は観光客と外灘、豫園などの定番観光スポットに行くだけでなく、過去数年間上海での生活経験を踏まえ、観光客と一緒に思南公館、蘇州河華政区間を歩き回ったりします。以前の約三十分の外灘「あっさり体験ツアー」が今の1時間半から2時間ぐらいとなる「じっくり観光」に変わりました。

新しい部分を加えることは、ガイドにとって、知識貯蓄と語学力の新たなチャレンジであり、これまで以上の打合せも必要となっていますが、都市の変化と新しいスポットライトをインバウンド観光客に紹介したいと思っています。外国人観光客にとっては日進月歩の変化が中国と上海の魅力の一部でしょう」と韋盈氏が率直に述べました。

「リピーター」を惹き付けるために、一部の旅行代理店は「1+1」タイアップという革新的なインバウンド観光商品を発売しています。つまり、中国の観光商品に加えて、日本やベトナムなどの短距離アジア諸国の旅行ルートもタイアップしています。「11月はドイツ人が紅葉を見に日本へ行くピークシーズンで、現地から日本への直行便は高額です。 上海トランジットで上海を観光してから乗り継ぎ航空券で日本へ飛ぶと、日本への直行便とあまり差がないので、今やこのような『旅行セット』がとても人気です」と中国旅行社協会インバウンド観光部門副会長、携程グループインバウンド観光部総経理孫博文氏は語りました。

より多くのマイナー言語ガイドとターゲット層明確の旅行商品が必要

インバウンド観光市場の急速な回復は、多くの課題ももたらしました。 複数の観光業界関係者の話によると、回復期に当たるインバウンド観光産業チェーンにとって、現在、ドイツ語、ロシア語、スペイン語などのマイナー言語を話せるツアーガイドの供給が非常に不足しており、北京、上海、西安など全国各地で英語を話せる随行ツアーガイドも「大人気」と述べました。

全体規模から見ると、現在のインバウンド市場はまだ2019年のレベルまで回復していません。ドイツやスペインなどビザ免除国の観光客数は急速に回復している上に、一部の新興市場のインバウンド観光客も著しく増えていますが、これまでインバウンドの主力市場であった日本、米国、カナダはビザの発給や航空便の未完全回復などの原因で、回復力は未だ限られています。「国のレベルでビザ免除によるインバウンド旅行への支援が拡大されている今、海外の同業者を中国に招いて考察し、中国の観光資源をよりよく理解してもらうことを通じて、中国の観光市場への信頼をさらに回復させるように、旅行関連業者はターゲット層がより明確な商品を提供する必要があります」と孫博文氏は述べました。

情報源:上観新聞(Shanghai Observer)