輸入博出展日本企業 中国で新たなチャンスを共有

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第7回中国国際輸入博覧会では、多くの日本企業の幹部がインタビューを受け、企業が中国市場の見通しをどのように見ているか、将来の投資意向や中国での事業展開について語りました。

輸入博の現場(撮影・範易成/界面新聞)

パナソニック

中国日本商会は11月6日午前、輸入博への日本企業の参加について記者会見を行いました。現場では、中国日本商会会長でパナソニックグループ代表取締役、グローバル副社長の本間哲郎氏は、今年は自動車、エネルギー、化学、モーター、素材、電子部品、家電、化粧品、金融などの分野に及ぶ220社の日本企業が参加していると紹介しました。

中国日本商会は今年7月、北京で「中国経済と日本企業2024年白書」を発表しました。同報告書は、中国日本商会が今年5月に実施した最新の四半期調査によると、中国における日本企業の中国市場への投資意欲は向上しており、調査対象となった日本企業の56%が2024年に投資規模を「拡大」または「維持」すると回答したと指摘しました。

「日本企業にとって、中国は消費者市場を意味するだけでなく、製造大国であるだけでなく、イノベーションとエンジニアリングの大国でもある」と本間哲郎氏は述べました。大多数の日本企業は中国の長期的発展について楽観的で、中国に根差して発展することに意欲的だと付け加えました。

今年の輸入博では、7年「皆勤」のパナソニックは、1000平方メートルの展示エリアに日常生活に関する家電製品や最新の住宅設備一体化ソリューション、グリーン発展に適する車載用品とスマート製造に関わるソフトとハードウェア製品を展示しました。

パナソニックのブース(写真・取材対象者提供)

「7年連続で輸入博に参加しており、投資促進、産業転換などの分野における輸入博の波及効果が徐々に現れてきていることを深く感じています」と本間氏は言いました。2019年の輸入博で、パナソニックは中国で「健康・養老」のNo.1ブランドのビジョンを打ち出しました。その後、パナソニックが中国で初めて構築した健康高齢者コミュニティ「雅達・パナソニックコミュニティ」が完成し、今年は西安高科地産天谷雅舎、北京建工地産熙華台、青島天泰などとの協力プロジェクトが実施されました。

パナソニックは今年の輸入博でも、ヘルスケアや健康コミュニティなどの分野に焦点を当て、複数のパートナーと覚書を締結し、協力関係をさらに深め、より広範な市場を共同で創出します。

パナソニックは過去4年間、中国への投資を拡大し続け、中国の18の事業拠点に新たな投資を行いました。本間哲郎氏は、「長期的には中国市場は巨大であり、成長の機会は常に存在すると信じています」と表明し、中国社会の高齢化が進む中、パナソニックは高齢者ケアの分野で、日本の経験と優位性を活用して、健康で安全な社会の居住空間の創出に貢献し、新エネルギー自動車市場に豊富な自動車部品と関連ソリューションを提供し、環境保護の分野でも、持続可能な発展に関連する製造業ソリューションも提供すると示しました。

「中国は引き続き開放を推進し、市場参入制限をさらに緩和し、法律に従って外国投資者の権利と利益を保護し、法律に従って秩序あるデータの流通を促進しています。我々は中国経済の長期的な動向を楽観視しています」と本間氏は語りました。

旭化成

今年の輸入博で初めて設けられた新素材エリアでは、日本の総合化学メーカーである旭化成が「多様な素材で新たな質の生産力を共同創出」をテーマに、素材分野における新たな成果を重点的に展示しました。

旭化成のブース(写真・取材対象者提供)

紹介によると、今回の旭化成のブースは「中国のニーズ」に焦点を当て、「自動車イノベーション」、「デジタルインテリジェンス」、「グリーン・低炭素」、「医学バイオ」の4つの主要分野に基づいた数十の革新的な製品を展示したといいます。旭化成株式会社執行役員兼中国総代表の近藤修司氏は、旭化成は日本ではよく知られていますが、中国での知名度は比較的低いと述べました。輸入博を通じて、より多くの方に当社の多彩な製品や技術を知っていただき、認知度を高め、新たなビジネスチャンスを創出することを期待していると言いました。

旭化成は、自動車・健康関連企業との共創を加速するため、過去2年間で上海と深センに自動車共創センターを設立し、蘇州に医薬品バイオプロセスラボを設立し、中国の取引先やパートナーとの協力を加速するといいます。

近藤氏によると、現在中国では環境保護や炭素排出削減、デジタルトランスフォーメーション、健康長寿社会などの分野で需要が高く、これらはいずれも同社の事業分野と一致するといいます。「中国と日本は経済的に密接な関係にあります。中国市場は非常に魅力的で、今後も成長し続けると信じています。旭化成は中国現地のパートナーと積極的に協力していきます」。

ソニー

新素材エリアにはソニーも出展しました。ソニーといえば豊富なデジタル製品やゲーム・エンターテインメント産業を思い浮かべる方も多いかもしれないですが、今回の輸入博ではソニーが新素材に着目し、環境配慮型素材の難燃性再生プラスチックSORPLASを使用したモジュール式の空間構築製品CMF(コモン・モジュール・ファミリー)のサンプルを世界で初めて公開しました。現場では3Dプリントで作られた「再構築可能なレンガ」というコンセプトモジュール、及びそのシミュレーション適用シナリオが展示されました。

SORPLAS製CMFのサンプル(写真・取材対象者提供)

ソニーのSORPLAS事業室の責任者の貴田真二郎によると、「デュアルカーボン」戦略と新たな質の生産力の発展が推進されているのを背景に、今回の輸入博は初めて新素材エリアを設置し、グリーンかつ低炭素の新素材に対する中国の高い関心を示しています。ソニーの環境に優しい素材の分野における革新的な研究開発は、この傾向と非常に一致しているといいます。

貴田氏は、新素材の分野において、ソニーは常に中国市場での長期的な発展と、中国における環境に優しい素材の応用と普及の加速と拡大に取り組んできたと述べました。昨年の輸入博での展示以来、SORPLAS素材は多くの中国の業界の注目を集めています。今回新たなアプリケーションシナリオを開発するパートナーの1社は、中国国内の最先端デザインブランドであり、同社は輸入博からこの技術について学び、最終的に両者の協力に達しました。

貴田氏は、日本と比べると、中国の産業生態にはいくつかのユニックな特徴があると考えているといいます。第一に、中国は製造業の規模と柔軟性において大きな利点を持っており、そのため新素材の研究開発と応用が市場の需要により迅速に対応することができます。さらに、中国は、特に持続可能な開発と環境保護の分野において、政策支援と市場指向の観点から、新素材のイノベーションにとって良好な環境も提供しています。

「SORPLASは、家庭および商業スペースのデザインにおいて大きな可能性を示しています。ソニーは、SORPLAS再構築可能なレンガをデザイナーのための持続可能な展示スペースの環境にやさしいソリューションおよびクリエイティブツールにする予定です」と貴田氏は述べました。「中国市場はソニーにとって非常に重要です。今後も素材分野での技術革新を推進し、中国の消費者のニーズに応え、中国での事業をさらに拡大していきます」と同氏は表明しました。

ブラザー

2018年に第1回輸入博が開催されて以来、ブラザーは毎年参加してきました。輸入博は新製品の発表と業界交流のための重要なプラットフォームとなってきました。今年、ブラザーは技術装備展示エリアに登場し、工業製造、商業小売、都市インフラ建設の分野での実績を総合的に示し、新しいA4カラーインクジェット複合機「小墨方」と新しいスマートアプリ「暢享繍」を含め、実際の産業シナリオにおける全製品のさまざまな応用を示し、直感的なディスプレイで、製造業の効率化と品質向上に役立つラベル印刷品質検査ソリューションなどを展示しました。

ブラザーのブース(撮影・範易成/界面新聞)

輸入博への参加が企業の発展に及ぼすプラスの影響について、ブラザー(中国)の董事長兼総裁の張燕氏は、昨年輸入博の関連イベントである技術装備外資系企業の特別円卓会議で、同社が関心を持つ2つのことを明らかにしたといいました。1つ目は外資企業がどのようにして政府調達により公平に参加できるかであること、2つ目は製品輸入における化学成分の厳格な規制であることです。

当時、関連部門の責任者らは、外国ブランドが中国で生産する製品は政府調達において平等な扱いを受けていることを改めて表明し、インク輸入の問題の解決を加速するために複数の関係者と協力すると約束しました。「それは私たちにとってとてもエキサイティングなことです」。

2024年初めに「低濃度トリエタノールアミン混合物の輸出入に対する監督措置の最適化に関する通知」が発表され、規制政策がさらに洗練され、関連する輸入プロセスが最適化されました。張燕氏は、これらの前向きな変化は輸入博の波及効果を鮮明に反映しているといいました。この恩恵を受けて、ブラザーのインクジェット製品の輸入周期は大幅に短縮され、資本コストが削減され、中国でのそのような製品の販売が効果的に促進されました。

今年の複雑かつ刻々と変化する経済状況について、張燕氏は、世界経済成長の鈍化により、外資企業は間違いなく多大なプレッシャーと課題に直面していますが、困難の中にも新たなチャンスがあると述べました。彼女は製造業を例に挙げ、モデル転換とアップグレードにより、物流倉庫、製造工場などの分野におけるブラザーのラベル機械の適用シナリオが拡大しているます。同時に、モバイルインテリジェンスの急速な発展により、地元のキャビネットメーカーと協力して、病院、銀行、地域コミュニティなどの公共場所に効率的で便利なセルフサービス印刷サービスを共同で提供する機会が与えられていまると指摘しました。

三菱電機

もう1社の「皆勤」企業である三菱電機のブースには、3層パズルキューブを世界最速で解くTOKUFASTbotが多くの来場者の注目を集めました。紹介によると、同ロボットの制御には三菱電機の高速・高精度位置測位技術やAIによる色認識アルゴリズムなどの最先端技術が用いられているようです。

TOKUFASTbot(写真・取材対象者提供)

今年の輸入博では、三菱電機は空調、エレベーター、産業オートメーション、半導体、自動車部品の分野における最先端技術とグリーン成果の展示に重点を置きました。三菱電機グループは、11月6日に記者会見で、2030年に工場とオフィスからの温室効果ガス排出量ゼロ、2050年には企業バリューチェーンからの温室効果ガス排出量ゼロを目指すと発表しました。そのため、三菱電機は省エネ・排出削減技術の研究開発を大いに推進し、設備投資を増やし、2024年から2030年までに約9000億円(約420億元)を投資する予定です。

「中国は現在、経済成長の転換点にあり、質の高い発展と新たな質の生産力が注目を集めています。こうした背景の下に、中国の関連政策は当社の戦略的発展と非常に一致しています」と三菱電機株式会社中国総代表の小柳津裕氏は述べました。また、中国市場の発展ニーズを満たす製品、ソリューション、サービスを模索して提供し続けなければならないとしました。「カーボンニュートラル」、「デジタル化」、「人工知能」、「データ処理」などはいずれも今日の重要なトレンドであり、これらの分野に注力していくと同氏は表明しました。

三菱電機グループは46年間にわたって中国市場に深く関わっており、現在、中国の7工場がグリーンファクトリー認証を取得しています。

ピジョン

ピジョンは今年初め、乳児用哺乳製品分野の技術モデル「バイオニックおしゃぶり3Sモデル」を中国市場で初めて発表しました。今回の輸入博では、ピジョンがインタラクティブデバイスを通じてそのモデルを復元し、来場者が小さなおしゃぶりに含まれる大きなテクノロジーを理解できるようにしました。さらに、ピジョンは乳児用授乳用品、母子ケア用品、未熟児、口唇口蓋裂の赤ちゃんなどの特殊なお子さん向けの特別製品における最新の科学研究成果と革新的な製品も展示しました。

ビジョンのブース(写真・取材対象者提供)

艾媒諮詢(iiMedia Research)のデータによると、中国の母子用品市場規模は2023年に6兆6478億元に達し、2025年までに8兆元を超えると予想されています。ピジョン中国副総裁の葉芳瑩氏は、中国市場は世界で最もダイナミックで強靭性のある消費市場の一つとなっており、母子用品は比較的垂直的な消費分野であるにもかかわらず、母親と幼児の生活品質の向上はすべての中国の家族にとって非常に重要だと指摘しました。

葉氏はインタビューで、中国は将来的には世界最大の母子用品消費市場になると予想されており、母子用品消費理念のアップグレードは母子用品企業に前例のない発展の機会をもたらした一方で、より熾烈な競争と挑戦をもたらしたと示しました。

「ピジョンは、中国の長期的な経済発展の可能性について常に楽観的です。中国はピジョンにとって、日本本社以外最大の海外市場です」。同氏はピジョンの中国市場への投資が増加し続けていることを明らかにしました。2002年に正式に中国に進出して以来、ピジョンは上海に本社を置き、上海外高橋、青浦、江蘇省常州市に3つの工場と1つの研究開発センターを投資して建設しました。「初期の製品導入から、徐々に現地での研究開発、設計、生産、製造の統合を実現してきました」。

キヤノン

キヤノンは今年の輸入博で、超解像画像再構成技術(超解像DLR)「Precise IQ Engine (PIQE)」やノイズ除去技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」など、さまざまなAIソリューションを搭載した新世代の高精細CTや、イメージングの限界を克服したMRI の3T装置「Vantage Galan 3T / Focus Edition」、高精細検出器を搭載した血管撮影装置など、数々の新しい医療製品を中国で初めて展示しました。

「キヤノンは7年連続で輸入博に参加してきて、イメージング、印刷、医療、産業などの主要事業分野での新技術、新製品、ソリューションを十分に展示し、中国市場とのコミュニケーションを拡大し、ブランドの影響力を高めました」とキヤノン株式会社の小澤秀樹副社長執行役員は話しました。同氏は記者団に対し、中国の開放政策とビジネス環境の改善により、外資系企業の中国への投資と発展に対する自信が高まったと語りました。

キャノンのブース(写真・取材対象者提供)

小澤氏は、キヤノン(中国)が中国市場の成長率と動向を踏まえ、「2035年までにキヤノングループのNo.1になる」という長期的な発展目標を策定したことを明らかにしました。同氏はこの目標設定に自信を持っている理由について、中国は急速に発展しているエコノミーだけでなく、世界的なイノベーションとデジタルトランスフォメーションのホットスポットでもあると指摘し、現在多くの不確実性に直面しているにもかかわらず、「中国経済の長期的な成長の基盤は変わっていない」と信じていると表明しました。中国の消費者の質の高い生活への追求は、キヤノンに大きな発展のチャンスを与えています。

今後の計画について、同氏は環境が安定している限り、中国への投資を拡大し続け、研究開発、生産、販売、サービスをカバーする現在の配置に基づき、市場に応じてより適切な生産と供給のエコシステムを構築すると同時に、特に医療分野においては、より多くの人々が医療技術の進歩の恩恵を受けることができるよう、産業・学術・研究・応用の全方位的な価値協力を行っていくと語りました。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が今年初に発表した2023年度「海外進出日系企業実態調査」によると、今後1〜2年の事業展開の方向性について、「拡大」と答えた在中国日本企業は調査対象全体の27.7%を占め、「現状維持」と答えた企業を加えると、調査対象全体の90%を超えました。「縮小」と答えた企業の割合は全体の9.3%で、「第3国(地域)に移転・撤退」と答えた企業はわずか0.7%でした。

上海理工大学外国語学院国別地域別研究所の楊本明教授は、一部の日本企業が実際に中国から撤退したり、投資を削減したりしていると述べました。その理由としては、生産コストの上昇により利益が減少し、企業が人件費の安い地域を選択せざるを得なくなったことや、照明、携帯電話、コンピュータ、テレビ、自動車などの分野で中国の地場企業が急速に発展したこと、日本企業は大国間の競争や地政学的な紛争の影響を受け、競争上の優位性を失っていることなどが挙げられると述べました。

ただし、同氏は中国は世界最大の単一市場であるだけでなく、日本にとって最も重要な貿易相手国の一つでもあるとも指摘しました。

日本の調査会社「帝国データバンク」の統計によると、2024年6月時点で中国に現地法人や生産拠点を持つ日系企業の数は1万3034社で、2022年6月(前回調査)に比べて328社増加しました。

楊教授は、一部の伝統的な製造分野では日系企業の優位性が薄れてきているが、精密機器、輸送機器、医療用品、化学工業、健康・養老などの分野において、日本企業の対中国投資は拡大を続けており、両国間の協力の余地は依然として大きいであると表明しました。

情報源:界面新聞